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ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女のpanpieのレビュー・感想・評価

4.0
先週まで上映していた「トンネル」を見逃してしまいはじめはノーマークだった今作が韓国映画初めての劇場鑑賞作となりました。
韓国の史実は殆ど知識がなくおまけに〝今作はフィクションである〟というお断りが冒頭で出るというショッキングさに驚いたものの今作が何故日本で公開出来たのかを確かめたい気持ちで観ました。
公開されてから日が経っており1日1回の上映だったのですが驚くべき事に凄い人数で上映10分前に着いた私は44番目の番号札を渡されとても驚きました。
通路のパイプ椅子かもって。笑
結局普通の席で観る事が出来ましたが年齢層が高くご夫婦でご覧になる方が多くてこの映画館に通っていて「人生フルーツ」以来の客層の違いに驚かされました。
やはり韓国映画は支持層が高いのだなとファンのたくさんいる中韓国映画初心者の私はアウェーな雰囲気を1人感じて鑑賞しました。


登場人物の名前が難しくて字幕にルビが振ってあったと思いますが徳恵翁主(トッケオンジュ)をなかなか覚えられなかったです。
翁主とは側室から生まれたという意味だそう。
徳恵翁主が生まれた1912年には韓国は既に日本の植民地になっていて日韓併合から2年が経ち正室の子であるイ・ウン(漢字変換出来ません)が人質として日本に連れてこられていました。
そして日本の皇族の方子(まさこ)と政略結婚をさせられていたそうです。
徳恵翁主も13歳で日本に連れてこられて学習院で学ぶけど卒業後はいずれ政略結婚をさせられる事になっていたそうです。
中学生の時に母から引き離され侍女を伴っていたものの異国の地に連れてこられた彼女を思うと王族の血を引いている事を呪った事でしょう。
卒業しても韓国に戻る事は許されず母親の危篤の時でさえ帰れなかったと映画では描いていますが調べてみると母親の危篤の時やその後亡くなった葬儀の時など何度か韓国に渡っているようです。

それを阻むのが日本人ではなく韓国人で親日派のハン・テクスと言う架空の人物で日本側が韓国に戻る事を拒否している訳ではないと描いているなど日本への配慮があり公開されたんだなぁと思いました。
「ラストエンペラー」でも坂本龍一演じる日本の将校がモヤっと悪い役を演じていた事を思い出しました。
日本では現在に至るまでの戦争において日本がした事を教科書には載せず大人になってから色々読み漁って知る史実があまりにも多く史実として教えない隠している部分の多い事に驚きますが韓国というか朝鮮半島での行いも私はまだ勉強不足の為分かりません。
ホ・ジノ監督は日本で公開されるとは思っていなかったと後インタビューで語っていましたがそれにしてはハン・テクスを韓国人でありながら親日派の嫌な奴に描いていたから日本で公開されたのかなと思いました。
ユン・ジェムンて凄い役者ですね!
彼が悪の権化のように描かれていて徳恵を虐めるのが憎たらしくてそれって上手いって事ですよね。
演技に引き込まれました。
「母なる証明」に刑事役で出てましたよね!
あの時は特に目を惹く演技ではなかったので忘れていましたがちょっと気になる役者さんなのでこれから注目して行こうかなと思います。

歴史に翻弄された可哀想な徳恵翁主を演じたソン・イェジン綺麗でした。
悲しい眼差しが印象的でホ・ジノ監督とは2作目にタッグを組んだんですね。
ホ・ジノってやっと覚えたポン・ジュノと似過ぎていて最初は同じ人と思っていました。笑
対馬藩主の血を引く宗武志(そうたけゆき)役のキム・ジェウクは日本語ペラペラのイケメンで日本人だと思っていましたが8歳まで日本で過ごしたからペラペラだったのですね!
徳恵の侍女ポクスン役のラ・ミランもとても上手くて徳恵を慕って支える侍女を好演していて時には笑わされ時には泣かされいい女優さんですね。
顔がきっと忘れない。笑
韓国に強制送還されるシーンは泣きました。

パク・ヘイルが演じたキム・ジャンハンは架空の人物で徳恵翁主の亡命はそもそも史実にはなかったそうで亡命を助けるシーンはこの映画の見所なのだけど全くのフィクション部分なんだそうです。
翁主様との淡い恋愛の様な信頼関係にあったジャンハンが架空の人物というのはちょっとショックでした。
いい役だったし名シーンだったから。
でも撃たれたのに次の日全く服に血もにじまず時折脇腹を抑えるものの腕を撃たれた訳ではないのにちょっとスーパーマン過ぎて描かれ方に疑問も残りました。

日本から唯一日本人役で李方子を演じた戸田菜穂さん。
李方子も明らかに政略結婚をさせられたのに亡命する時の夫と逸れ亡命が失敗に終わると潔く日本に残ると凛とした妻を演じてとても良かったです。
徳恵翁主とのウェディングドレスの試着シーンは何も知らされていない方子の心の迷いを丁寧に演じていて流石に上手かったです。
今作に唯一出演している日本人としてなんだか誇らしいというか私が言うのは全く変な話ですが嬉しかったです。笑
本当に素晴らしかった!

徳恵翁主が敗戦後に韓国に戻れなかったのは日本側が引き止めたというより当時の韓国政権を握っていた李承晩が帰国を認めなかった様でその後クーデターが起き政権を掌握したパク・チョンヒ(漢字表記出来ず)が帰国を働きかけてやっと永遠に帰国が叶ったそうです。
韓国の空港での元側近達の号泣するシーンは涙を誘いました。
その中に強制送還されたポクスンの年老いた顔を見つけた時に焦点の定まらない目をしていた徳恵翁主の瞳に唯一光が射した瞬間で涙が止まりませんでした。

史実とは異なるとは言え当時の日韓情勢を知る意味で私は観て良かったと思いました。
韓国においても徳恵翁主はあまり知られていなかったらしく今作の前に出版された本がベストセラーになりそれからの映画化だったそうです。
歴史に翻弄された大韓帝国最後の皇女の悲しい運命を知る事が出来今気持ちが韓国に向いている事で今作を観る事が出来て本当に良かったです。
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