みーちゃん

十三人の刺客のみーちゃんのレビュー・感想・評価

十三人の刺客(1963年製作の映画)
4.2
工藤栄一監督。集団抗争時代劇ということで、よくあるテレビ映画の忠臣蔵的なものをイメージしてたら全く違った。本当にその時代に撮ったのかと錯覚しそうになるリアリティとドラマだった。

見事な起承転結の構成だから、誰の立場で考えても無理のない理解しやすいストーリー展開。あれだけの大事件を密かに計画し実行するのだから、普通は登場人物に何かしら感傷的なセリフを言わせたくなるところを、ぐっと抑え、心情表現は最小限に留めるセンスも好き。

私は封建制度、主君に自分の命を預けるという感覚、老中の命令を受ける導入部分には、正直モヤモヤした。はっきり言って嫌だった。そこは新しい考え方を持ち、それを気持ちよく言葉に出してくれる、島田甥のキャラクター設定によりバランスが取られていた。そして何と言っても島田家の食客である、平山九十郎という"立場も身分も違う"人物を投入したことが、素晴らしいアクセントになっていたと思う。
(あと、いっそのこと鬼頭半兵衛を嫌な奴にしてくれたら気持ちが楽なのに)

映像においては最後30分間の決戦は凄すぎて、その壮絶さは言うまでもないけれど、私は参勤交代のシーンの本気度にも驚いた。教科書に書いてあった参勤交代とは、こういうものだったのかと妙に納得した。

そして最も印象的なのは、戦場となる落合宿に明石藩が到着するシーン。一団が姿を現すのを、固唾を呑んで橋の向こう側から捉えるロングショットの長回し。モノクロだからこそ美しい朝霧の中からのフェードイン。呼応する五十三騎の馬蹄音。

いつまでも心に残ると思う、最高にかっこいい場面だった。