ささきたかひろ

十三人の刺客のささきたかひろのレビュー・感想・評価

十三人の刺客(1963年製作の映画)
3.7
東映時代劇は自分にとって子供の頃から無意識に刷り込まれた、いわゆる「時代劇」の原型でもあり、それだけにいざ東映時代劇を見るとなると「お約束」を寛容に受け入れる体制を作ってから臨まざるを得ない。

そんな私がいわば「地雷」でもある東映時代劇の傑作誉高い本作を見ようと思った理由は単純で「サマーフィルムにのって」に大感激したからに他ならない。いまや敬愛するハダシ監督の激オシ作品、地雷だろうがトマホークだろうが見ないわけにはいかないだろう!という事で見てみました。

最初に捻くれた意見を述べておくと、黒澤明がちょっと頭がおかしいのであって、時代劇ってこのスケールで十分、いや満足すぎて大興奮ですよ。

なんとなく村そのものを要塞化してそこへ敵を虜にする辺り、かの侍が6、7人集まって闘う名作を連想しちゃいますが、黒澤明の頭がおかしいのであって、これで十分なんですよ!

西村晃演ずる浪人の剣豪もかなり宮口精二演ずる久蔵を意識してはいますが、黒澤時代劇よりもごちゃごちゃしていて、これはこれでリアルだなと思いました。

虜となった集落内の戦闘も黒澤明ならマルチカムで撮っちゃうんだけど、こちらはキャメラマンや照明さんがドタバタ走り回って必死に捉えた泥臭さがある。

伝説の時代劇スター嵐寛寿郎や笑点の黄色師匠のモノマネでしか知らなかった片岡千恵蔵が動いているだけで感動するし、凛々しくて一体誰だかわからない若かりし里見浩太朗や山城新伍も新鮮です。

根拠はないけれど時代劇は7割がフォーマットプログラムだと思うし、それでなければ本当は勧善懲悪の痛快さなんて感じることもできないはず。

ま、それをぶっ壊して尚且つめちゃくちゃ面白い時代劇を作った黒澤明の頭がおかしいのであって、この作品は傑作です。

(私は黒澤明が大好きです…念の為)
ささきたかひろ

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