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十三人の刺客の東京キネマのレビュー・感想・評価

十三人の刺客(1963年製作の映画)
3.0
松方さん追悼の予習。工藤栄一監督、池上金男のオリジナル脚本。1963年封切りの東映作品です。時代が時代なんで、スタッフの質の高さが随所で感じられます。

まずね、引きの画作りが素晴らしい。ロケセットの組み方もそうですが、参勤交代の侍一行のマスの動きが美しいのですよ。それに全体的に覆う重厚な雰囲気がこれまたいい。音楽はなんと伊福部昭ですよ。やっぱりうまいですね。演者もいいですよ。千恵蔵、アラカン、月形龍之介と、「七剣聖」の三人まで出てます。昔の日本人の顔はいいですね。面構えがいいというんでしょうか。声もいいし、何と言っても剣を持った動きが美しいです。この雰囲気は今じゃ出せません。

ただね、侍映画としては “侍として良く死にましょう” のそれぞれの理由付けが良く分からないのです。島田新六郎(里見浩太朗)だけが分かる程度で、後は皆当然のごとく死に行く覚悟で最初から参加しているのです。 それに、エンディングの落合宿の35分間の殺陣シーンはちょっと長すぎますよ。もちょっと仕掛けやトラップを作り込んでくれないと、鬼ごっこにしか見えません。だって、この映画、『七人の侍』の9年後なんですよ?それにしたら、殺陣にしてもチャンバラ剣劇を否定したところからやってくれいないとリアリズムにはならないと思うんですがね。それに加えエンディングの処理が悪いので、カタルシスが全くない状態で終了しちゃいます。

東映時代劇好きが非常に持ち上げる映画であることは十分承知していますが、矢張り墓標としての価値しかないような気がします。。。
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