ゲイリーゲイリー

ドリームのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
3.5
どれほど劣悪な環境下であっても、決して屈せず声を挙げ行動することの美しさや尊さを力強く描いた作品。

黒人差別や女性差別が横行する環境であっても、自らの業務を粛々とこなし周囲の人間に自らの存在価値を知らしめたキャサリンの忍耐力と数学の才能。
独学でコンピュータを学び、その知識を同僚にも習得させたドロシーの先見の明とリーダーシップ。
エンジニアになるため、白人専用の学校へと通わねばならないという無理難題を見事成し遂げたメアリーの行動力と諦めの悪さ。
これら彼女たちの行いは、黒人や女性といった垣根を超え、1人の人間としてどういった生き方が美しく映るかを私たちに教えてくれる。

本作で描かれる人種問題や女性差別は、今なお地続きの問題だ。
キャサリンの同僚のように、直接彼女に何かをしなくとも、差別を黙認すること自体が差別であると痛感した。

また、本作の魅力としてシリアスな問題を取り扱いながらも、軽快さやポップさユーモアを忘れずにいることが挙げられる。
キャサリンやドロシー、メアリーの会話からも伺えるように、ユーモアはどんなに劣悪な環境下であっても希望や再び立ち向かう力を与えてくれるのだ。
それと同時に、本作での軽快さやポップな雰囲気があるからこそ、キャサリンがアルに自らがいかに劣悪な環境に置かれているかを訴えるシーンは胸に迫る。

どれだけ待とうと、自らの居場所は現れない。
世界がどれほど間違っていようとも、何も行動しない限り世界は正しい在り方にはならないのだ。
本作は、声を挙げ行動することでしか自らの望む世界は決して現れず、逆に言えば行動することは、世界を変えることにもつながるということを再認識させてくれた。