Kevin

ドリームのKevinのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.5
1960年初頭、米露間で宇宙開発競争が繰り広げられていた。
そこでアメリカは〝マーキュリー計画〟という一大事業を遂行することを決意する。
後にこの計画はNASAの歴史的な偉業として語られることとなるのだが、この計画には知られざる人々の努力があったのである...。

本来なら、というより我々一般人から見れば宇宙飛行計画の主役はロケット、または宇宙飛行士になるだろう。
しかし本作でスポットライトを当てているのは陰の人、つまり原題の〝Hidden Figures(隠された人々)〟である。
その中でも、ある黒人女性3人を中心に描いている。

時代は1960年代初期、まだ黒人差別が色濃く残っていた頃だ。
それに加え、アメリカが黒人差別に対し改善に向かって行ったのも同時期であるらしい。

本作の舞台となる時代は水飲み場は黒人・白人で別けられ、NASA内でもトイレは黒人専用のトイレが設けられている。
触れることだって躊躇する。
黒人が側を通れば奇異の目を向ける。
残念ながらこれが現実。

劇中ではファレル・ウィリアムスを始めとした軽快な音楽や彼女達の前向きでユニークな性格のお陰で暗すぎずに纏められていたが、それでも黒人差別という事実が描かれていることに変わりない。

そんな黒人たちにとって生き難い時代であるにも関わらず、決して戦うことを諦めなかった彼女達。
さすがの3人でさえ沈んでしまう場面はあった。
けれども時には受け入れながらひたすら前へと進む。
“前例がないなら前例になればいい”
その姿に何度心をギュッと掴まれたことか。

確かに彼女達はずば抜けた賢さを兼ね備えている。
だから一握りしか働けないNASAであっても成功出来たんだと思われるかもしれない。

しかし、彼女達がこうして認めてもらえたのは賢さもそうだが、何より芯の強さにあると思う。
仮に彼女達が頭脳明晰でなかったとしても、あの心を持っていたのなら他の場面でも成功していたに違いないだろう。

例え僕らにあれほどの知能はないにしろ、通ずる部分は必ずあるはずだ。
どこかで甘えてしまってないか、どこかで線引きしてしまってないか。
可能性を掴める手前で自ら拒んでしまってないか。
そう思い返してみると言葉が詰まってしまう。
けれどそれと同時に少しでも頑張ってみようと思わせてもくれる。

ドラマとしても十分過ぎる胸アツな内容なのに娯楽作品としてもハチャメチャ面白い。
ここまで大ヒットしたのも大いに頷ける。
改めてスポットライトが当たる人々の陰には沢山の支えや努力があることを知れた。

“人間は月に行けるだろうか。-もう行ってるわよ。”
最高に痺れる。
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