ロッツォ國友

ドリームのロッツォ國友のレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
3.9
お喋りママがIBMの最新スパコンを筆算でぶっ倒すお話!!!!!



んーー気持ち良い。
やっぱり最高ですねぇ暴力無き下克上ってのは。。
素直にガッツポーズですわ。

1960年代当時の黒人&女性の地位、扱いをストーリーの必然として置きつつ、それ一辺倒にならず徹底した実力主義で周りの見る目を変えてゆく展開を、軽快な描写とゴキゲンなヒットソングで彩るノリノリムービー。

「常に、先駆者であれ」

この映画のメッセージは、この一点に尽きると思った。


とりあえず、ムーンライトで初めて見たけどフアン夫妻が2人とも出演してるのがちょっと面白かったし、あの、マハーシャラ・アリ?がね、マジかっこいいね…

声とか顔つきとかね。
あと、演技上ヒマになるととりあえず唇舐めるとことかね。イイっすね。優しくて強い大人の男って感じ。
泳げるナイスガイ大物ドラッグディーラーに、まさかこんなクールな過去があったなんて…(錯乱


話はとにかく、シンプルでストレート。
んでもって時代背景や状況説明は難しくなり過ぎず、簡潔且つスマート。
計算シーンとか難しい勉強をしているシーンについては、彼女らの苦労を称える意味でも、もうちょいじっくり描いてもイイ気はしたが…テンポを優先した設計なのだろう。



水飲み場も、トイレも違う。
コーヒーサーバーとかも、同じだとなんかイヤだ。
バスの座席とかも、座っちゃいけない席がある。

トイレなんぞは、「男性用」「女性用」「黒人用」てな感じで、男女差すら考慮されてない所もあったらしい。

ブルノート全盛期の黒人スターすら、現場入りは白人達と違って裏手の従業員用出入り口だったと聞くし、デパートでトイレに行きたがる娘の為にトイレを探したら、5〜6階ぐらいまである建物なのに黒人用は1階だけで、しかもそこが掃除されてないクソ汚ねぇトイレで、屈辱に泣きながら結局草むらで用を足させたという親子のコラムを何かで読んだことがある。
…現実は子どものイジメより程度が低いね。



ただ本作でいうと、白人のクソうぜえ人種差別も、まぁクソうぜぇんだけど、決してやり過ぎず醜悪過ぎず、白人が特別ワルい奴らってワケじゃないけど、社会制度上黒人がイヤな扱いを受けているよ、という感じの温度感になっている。

確かに白人による黒人への嫌がらせ描写はあるが、あんまりここでエグいのを入れ過ぎると、ストーリーテリング上最後にはソイツを痛い目に遭わせなくてはならないが、そこまで入れると本作のコンセプトが揺らいでしまうだろうし、一応程々に表現されている。
黒人の扱いはストーリー上・時代背景上の必然ではあるものの、白人を懲らしめるのが主目的ではないのだ。


…しかし、とは言っても、イチイチ鼻につくクソ制度クソ常識のオンパレード。
何かにつけ「黒人は」「女は」「前例は」…って、お前らそれでも本当に仕事する気あんの?って感じ。

それに対し決して屈さず、反対意見を出し続けるキャサリン達。
それはキング牧師が、マイルス・ディヴィスが、ローザ・パークスが声を上げてきたのと同じ勇気だ。
彼女達が声を上げなかったら、いつまででもあの状況だっただろう。
常に、先駆者であれ、ということ。


元はと言えば、アメリカ黒人差別の歴史と、ケネディ&フルシチョフが東西冷戦におけるいがみ合いのパワーを宇宙開発競争へと昇華した歴史には、直接の関係はない。
(最終的には軍事利用なんでしょうけど)


しかし、上述したような理不尽に対し、前例を作るべく闘い続けるベクトルと、
数字を操り先を読み、宇宙という名の前例無き場所を目指すベクトルは、
どちらも同じ方向を向いており、その結論が重なるところに本作の力強いメッセージがある。


常に、先駆者であれ。
必死に努力し勉強し、間違ってると思ったら、臆せず声を上げろ。
状況にも常識にも屈しない心とひたむきな努力こそが道を切り開く。
進化するテクノロジーの波に仕事を奪われそうになっても、絶対に投げ出すな。
アツいぜ。そりゃ耐熱板も持たねぇぜ。


また同時に、劇中のクソ制度を地位の上で司っていた本部長や判事の裁量無くしては、このサクセスストーリーは成り立たなかった側面も見逃せない。
大いなる責任を持つ者は、その責任において、柔軟で知性ある決断をしなくてはならないのだ。
その下につく者達の声を意味もなく無碍にしているようでは、大義は成し得ない。

そういった組織の中で動く時の心得みたいなものが、本作の中にはある。


そして、東棟と西棟の間を走り回る文字通りの東奔西走描写の反復を物語の必然としてコミカルに描きつつも、それをクライマックスで真逆の意味を持たせて盛り上げ演出に使うアレに代表されるような見事な展開は、物語を衛星軌道に乗せ、最後はちゃんと着水、もとい着地させる本作全体に散りばめられた極めて精密な計算によるものだろう。
史実なので真新しいモノこそ無いが、非常にうまい。



事実をエンターテイメント化するの、本当に難しいと思うけど、本作はカタルシスに満ちていて超うまいと思いまちた!

本編でも実際の画像映像が何度か挿入されるが、最後にはモデルとなった人物写真まで出てきてとってもサービスが良い。
そして主人公達3人ともが、「黒人女性として初の〜」という見出し付きで紹介されている。
本当にあった、本物の勝利。

最後の最後まで、「先駆者であれ」という力強いメッセージでガンガンくる。

ええ話やでおま……
観る前にコーヒー2杯飲んだから危うく膀胱が破裂するとこだったけど、ちゃんと劇場が明るくなるまで見届けましたよ………


計算手の話なので、数学詳しくないと楽しめないのでは??と思われるかもしれませんが、今や九九を殆ど思い出せず、「くり上がりのある足し算」で挫折した俺が十分楽しめたので、誰でもイケますよ!!


因数分解って何????
空手の技?????
ロッツォ國友

ロッツォ國友