シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

ドリームのシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
3.7
映画の中で、宇宙開発の歴史を描くストーリーは「ライトスタッフ」や「アポロ13」などいくつもありますが、考えてみればNASAで働く黒人女性の姿というのは明示的に描かれていた記憶がありません。その意味でまさに、原題のHidden Figures(隠された肖像。隠された数字とも掛けている?)なわけですね。
映画の作りとしては手堅く、白人警官に先導されてNASAに乗り込む冒頭部などつかみもうまい。「ヘルプ」を彷彿とさせるような痛快さもある。
一方で、改めて思うのが、トイレからコーヒーポットまで、ここまで徹底的に差別しながら、同時に、彼らの力を排斥せず国家プロジェクトに使うというアメリカの不思議な、矛盾した姿勢の、恐ろしさと力強さ。
日本人には差別も合理もここまで徹底して行うことは出来ないと思うと同時に、この両者を繋ぐものが何かあるのではないかという懸念もちょっと感じるのですね。例えば牧畜民の家畜を取り扱うような文化とナチズム、アパルトヘイトと本作でも描かれるセグレゲーションとの関連性など、考えさせられる起点になった。
字幕では黒人差別と丸めて記載されるが、実際にはあくまでもcolored、有色人種差別であるのにも注意したい。 

追記 トイレ差別は実はこのときにはもうなかったのか。そうすると上記で感じた矛盾する姿勢の恐ろしさというのは、作劇上の都合で作られた矛盾に過ぎないのかもしれませんね。