り

ドリームのりのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
3.8
有能な人間は人種差別すら越境する。本作はアメリカの一大事業である宇宙開発及びドギツイ人種差別について描写されている。舞台は1960年代のNASA。主人公の黒人3人組は自身の肌に翻弄されながらも、その類まれない才能を活かし、懸命に差別に立ち向かう。冒頭に述べたが、本作で評価すべきなのは本部長である。彼の慧眼が彼女達の能力を見抜き、宇宙開発に寄与させた。黒人だからと低い地位に留まらせることをせず、昇進させたし、「白人用」のトイレやコーヒーの区別を禁止した。この態度が宇宙開発の成功に大きな役割をはたしている。
本作で思ったのは白人クソという見方をしてはならないこと。差別はクソだが白人はクソではない。なぜなら、彼らには責任が(あるようで)ないからだ。なぜ、黒人が劣位に置かれ、侮蔑されるか。それには、理由はない。慣習である。もちろん、悪習であることは疑う余地のないことだが、慣習に従っているだけの白人を責め立てることはできない。喩えるならば、僕らはゴキブリを見て嫌悪感を抱き、場合によっては殺す。しかし、それは普通のことだ。生理的な感情によって引き起こされる自然な行為だ。黒人への差別もこれと同じ原理が働いていると考える。生理的に黒人は無理。なぜなら、汚くて醜く劣っている「と感じるから」。だから、彼らを差別し、排斥する。ここに、合理的な理由もクソもない。ただ、慣習ーもっといえば自然に湧き上がる感情に従っているだけだ。だから、責め立てるべきは、白人ではなく、彼らに内面化されている感情のプログラムであり、黒人を差別する慣習だ。最も、これらは見えにくい故に白人がクソという短絡的な帰結になってしまっているが…
り