ベルサイユ製麺

ドリームのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.2
ひたすら真っ当!虚仮威し皆無!
それだけでこんなに熱が生まれるなんて‼︎
「ちょっと優等生過ぎるんじゃないの?」みたいな(いかにも自分が言いそうな…)戯言が吐かれる余地も無い程に、全方位的に正しい。しかもその正しさは、映画で描かれる内容の意味的な正しさのみならず、その描き方、見え方、受け入れられ方、それら全てに於いて調和した正しさに思えるのです。圧倒的。

1960年代当時の黒人達が受け続けた不条理な差別の解消と公民権の獲得をかけた熾烈な戦いは、例えば南部の牧場で、ブロンクスのコーヒーショップで日夜繰り広げられていた訳ですが、合理主義と知性こそが求められると(勝手に)思い込んでいたNASAの様な機関でも公然と人種差別が存在し、且つそれに打ち勝った女性達がいた(しかもこの上なくスマートなやり方で!)なんて想像もしていませんでした。
彼女達が、ストレスに、プレッシャーに、沸き上がる感情の爆発を抑え込んで、ひたすら前向きに対処しひとつひとつ乗り越えていく様はとにかく痛快!しかも、今、この作品がアメリカから生まれる健全さ!ただ最寄りのトイレを使えること、学びたいことを学ぶこと、堂々と通路の真ん中を歩くことがこんなにも感動的に映るとは…。
胸がすく、勇気が湧く、も勿論なのですが、自分の足元がどうなってるかもう一度確認せざるを得ないですよね。無意識に何か踏みつけちゃってないか?漠然とただ知ってる名前に投票してしまってないか?って。
で、基本的な事なのですが、映画そのものがめちゃくちゃ良く出来ている!心地よいテンポ感、構成。カラフルで隙がなくて脳も目も暇にならない。…み、耳も。ファレルのやろー。悔しいですが、アイツが大成功してるのは当然。
生まれついての天才が主人公な事に不満がある方も居るかもしれませんが、努力してないとも苦労してないとも描いてない。コレ観て子供達が勉強しよ!って思ったら最高じゃないですか。差別描写は確かにソフトですが、そこは『マルコムX』なり『グローリー/明日への行進』なり観て保管すれば良いと思います。
邦題にイライラだったのですが、ひょっとしてキング牧師リスペクトなのかしら?そうでないとしても、大きな意味では的はずれでは無いかもしれません。ダッサイですけどね。
それにしても宇宙を目指すお話って、『宇宙兄弟』『度胸星』『2つのスピカ』とか(全部漫画、全部パイロットなのだが…)、なんでこんなにワクワクするのでしょうね?ファイナル・フロンティア感?ホントに、気持ちが昂りすぎて涙が出そうでした。面白くて、タメになって、感動出来て、多分どんな薬物より力が湧いてくる。それでも観ないってなると、…手遅れかもしれません。絶対的におススメ!!!
惜しむらくは、自分が黒人女性だったら、5.1をつけてたんじゃないかな⁈


そう、あと、久し振りに文句無くカッコいいケヴィン・コスナーが見れた!亡き母が唯一好きだった外国人俳優がケヴィン・コスナーでした。『パーフェクトワールド』を借りて来てあげたら、ラストの展開に「なんかホントにおらんなってしもうたみたいね」と涙ぐんでいたのが忘れられません。今度帰省する時持って帰って仏壇の前で再生してあげようかなー。