J四郎

ドリームのJ四郎のレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.0
公開前から評判が良い作品で、ココでのスコアも高い。しかし個人的にこの安易な邦題と「アンタらコレを観て勉強しなさい!」と強要されるよーなイメージをしていたので今まで敬遠していた。

まず「ドリーム」という邦題から想像していたのは差別に負けずに夢に向かって突き進むサクセスストーリーだった。確かにあながち間違ってはいないが、このタイトルでは作品の良さをちゃんと伝えきっていない。

実際に観るとよくあるチープなもんではなかった。苦しい現状が高い壁として立ちはだかっているのは分かっている。しかし、それをどうすれば乗り越えられるか?テーマは重いが、ユーモアを交えてしっかりと魅せてくれます。

劇中のNASAは時代が時代だけに女性は軽んじられ、しかも主人公たちは黒人でもあるっちゅう二重に差別される立場にある。能力があるだけではどうにもならん状況だが、それをどうやれば変えられるのか?そのひとつの答えを示してくれているように思える。
計算係の彼女たちだが、そこに技術革新の波が襲いかかる。そこでも悲観するのではなく、どうすれば変化に対応できるか奮闘するところは感動モノ。仕事で愚痴ってばかりの俺とは全く次元が違うね。

この時代ではトイレでさえ白人、黒人用で分けれてるっていうトンデモない状況。もはや人間ではなく有色人種は動物として見ているっちゅうことやね。(どうやら史実ではこの劇中の時代には、NASAでのトイレの差別は無くなっていたようだが)

そこを押し付けがましく危ない活動家みたいに声高に叫ぶのではなく、アッサリとした描写で伝えてくれます。白人にしても男にしても差別するだけのクソ野郎として描かれてなく、中には実力があるなら認めてやるぜ!的な人もいる。

心に残ったのはドロシーと白人管理職の女性がトイレで交わす会話で、管理職側が「勘違いしないで差別しているわけじゃないのよ」みたいな事を言ったあと、ドロシーは「分かってる」「そう思い込んでいるってことは」と返したところかな?(曖昧な記憶なので正確には台詞がちょい違うかも)
恐らくココが作り手の伝えたかった差別の難しいところなのでは。

差別はイケマセンだの口先だけで教育するよか、それがなんでアカンのか?またそれとどう戦うかのヒント(イジメにしてもそうだろう)。こういう作品を子供たちに見せる方が何百倍も有益やろな。まあ、そういう問題提起的な部分を除いても普通に面白い映画でした。

近頃、話題に上っている差別問題はもちろん、発展に伴い人間の職がコンピューター等に奪われている現状とか、タイムリーな要素も含まれておりますね。
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