滝和也

レッド・スパローの滝和也のレビュー・感想・評価

レッド・スパロー(2017年製作の映画)
3.9
極限の心理戦。
挑まれるのは
見ているあなた(^^)

未だ続く大国のエゴ
未だ続く悲しき冷戦の中、
1羽の雀が翼を開く。

「レッド・スパロー」

かなり重く、真面目に作られた見応えのあるスパイ作品でした(^^) ロシアの女スパイ、ジェニファー・ローレンス演じるドミニカ。果たして彼女は今どちらの味方なのか、彼女の敵は誰なのか、彼女は何をしたいのか、その全てが心理戦となってあなたを襲います。

スパイとは、自らの心理を読ませず、相手の心理的弱点を読み取り、そこを突くわけですが、観衆が正にそれ通り、彼女に手玉に取られている気がします。もちろんそれはジェニファー・ローレンスの身体を張った演技あればこそ。前半のスパイ訓練所から、中盤の拷問シーン、そして圧巻のラストへ。

パズルのピースが組み上がるかの様に、冴えたラストがまた素晴らしい(^^)、ジェニファーのここ迄の魅力に目を奪われ、パズルのピースに気付けなかった(笑)。

心理戦に特化しているので、アクションはほぼありませんが、緊迫感が張り詰めているので飽きません。またそのベースとなっているのは彼女がロシア所属である点。ロシアの冷たく恐ろしいイメージは未だ全体主義的なソ連のイメージであり、アメリカ人の抱いているイメージなのでしょう。

ジェニファー・ローレンスにはあまり興味はなかったのですが、マザーでの演技に惹かれ、今作を見ました。マザーでの翻弄される純粋無垢な存在から、真逆の存在へ見事な変化であり、かつ女性であることの魅力を前作と同じく発散する、その演技力は素晴らしかった。

昨今、007のダニエル・クレイグの成功以降、そのカウンター的な作品が増え、スパイ映画が隆盛を極めているのは、スパイ映画ファンとしては嬉しい限り。スタイリッシュさやユーモア、コメディ要素を分断に盛り込むのも良いのですが、リアリティの部分を伸ばし、地味ながら、真面目な創りをした作品も良いものです。※ジェニファーがゴージャス過ぎて画面には華がありますが(笑)

追記
因みにシャーロット・ランプリングの硬質的な存在感、ジェレミー・アイアンズの重鎮たる存在感が見事で、その緊迫感を更に盛り上げています。

追記2
確か米露首脳会談が今日ですか。彼ら2人を見ていると裏側はこんな混沌があってもおかしくない気がします(T_T)
滝和也

滝和也