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ANTIPORNO アンチポルノのおとなのみほんのレビュー・感想・評価

ANTIPORNO アンチポルノ(2016年製作の映画)
3.8
これは冒頭から「あ、また賛否両論ある作品出したな園子温」と思わされた作品でしたが、観終えた上で私は推す派。
元から園監督はポルノ映画は撮れないがアンチ・ポルノ映画なら撮れると言うことでオーケーを貰い創り上げたそうでタイトル通り正に「アンチポルノ」。
全くポルノ映画ではありません。
よく男性がこの女性達を描けたなと驚く位、男性から見た女性像をぶち壊すような強烈な作品です。
70分と尺も短めなので、評価低いしどうなの?と思ってる方には取り敢えず試しに観て欲しい!


-----以下ネタバレ含む考察などなど-----













先ず私的な理解として、キョウコが女流作家である事は現実だけど、有名になればなる程昔若気の至りで出演し処女をポルノ映画で失ってしまった事が名前と共に公になるのではないかと言うキョウコの恐怖をベースにトラウマ的なSEXに対するマゾヒズムと妹を失った事で新たに子供を作ろうとする両親のSEXに対するサディズムの間で、まだ未熟な思考の侭性への消費に気付き自分ではない誰かへ人生を移す作家の葛藤が夢や幻覚の形で彼女を苛める。
「こんなの私の人生じゃない。」
ストーリーの大まかなラインはこんな感じだと思うんですが、そこに女性の不自由さを絡め爆発させているところがとにかく物凄い。
その爆発力のあるセリフ回しと言うのは例えば「少子化」って沢山の問題の中での結果だけどそれを「SEXをしてください」って一言で言ってしまうような。これは極端な例えだけど、その位の「え?そんなに直接的なセリフをこのアクターに話させるの?」と驚いてしまうような長台詞が今作には非常に多い。
キョウコのSEXと両親のSEXの違いとは。山盛りの煙草や妹や蝶からもうかがえるように著しくキョウコは愛や情と言うものに飢えていてその線引きが分からないから女達に問いかけ続ける。

正直この作品には「モラルがない」。
でも自由の中のマナーや常識に並べて存在するモラルが自由に首輪を付けてその手綱を引いてる。どこに行っても自由の先には何かがあって、その何かが無ければこの映画のように滅茶苦茶になってしまうんだけども、それに対してとにかく滅茶苦茶に反抗をして行かなければいつしか手綱を引いているのは自分ではなくて手綱を引かれて居たことになにを感じるかと言う。
園子温の女性を限りなく尊重した叫びに考えさせられる映画でした。