CoHeyさんは凍結されました

ANTIPORNO アンチポルノのCoHeyさんは凍結されましたのレビュー・感想・評価

ANTIPORNO アンチポルノ(2016年製作の映画)
3.4
さて、園子温監督作品「アンチポルノ」、見てまいりました。

こちらの映画、日活ロマンポルノリブートプロジェクトという、在りし日の日活ロマンポルノの隆盛をしのびつつ、現役の気鋭の監督に新作を撮り下ろさせて「どーだすげーだろ!」をやるための作品の一つであり、その第三弾として現役の気鋭の監督といえばこいつは外せないだろ!の一人、園子温がメガホンを取った作品であります。

さて、昔の日活ロマンポルノといえば我々に身近なところでは、庵野秀明監督にも多大な影響を与えているウルトラマンなどで有名な実相寺昭雄監督が若かりし頃に腕を磨いた場であり、実相寺監督は特撮ではもちろんのように巨匠であるのと同時に芸術ともいえるポルノ映画を何作も残しているというフィールドなわけでして、それまでのピンク映画とは違うれっきとした映画文化を醸成した映画史という観点からは外してみることが不可能な稀有なフィールドなんですね。

そもそもです、これは俺の持論ではあるのですが、人間の本能的・根源的な感情が発露するポイントの大きなものというのは、「恐怖」と「快楽」(特に性的)と「慈愛」と「生存欲求」が大きな4つだと思うのです。これは人間的というよりは動物的な本能に近い部分ではあるのですが、これらのポイントがないと個としても種としても人間が成り立たなくなるというポイントなんですね。ぶっちゃけその他は枝葉だと思ってもいい。なので、それらのポイントに直接的に繋がり、映像としても面白味が出るホラーやサスペンスやアクションやポルノがある種の文化醸成器官として機能して、作家の作家性を露わにする側面があるのだと思う。「マッド・マックス 怒りのデスロード」が感覚的に訴えてくるのなんかもまさにここですよね。
さて、その意味にも置いて、「冷たい熱帯魚」という現実の事件をモデルに人間の「恐怖」を描いた作品を何よりの筆頭として活躍する園子温が日活ロマンポルノというフィールドでメガホンを取るということが如何に現代日本映画のフィールドにおいて重要かということはご理解いただけるかと思います。

え?園子温ってツイッターで「シン・ゴジラ」とか「君の名は。」とかを作品も喜んでみてる客も叩いてた人でしょって?そうですねwあの炎上芸は愉快でしたねw まぁ、作品と作家の人格とは別ですから。作家の人格が作品ににじみ出るのも作家性ってやつで、それもそれで面白いですしねw

ということで、前置きが長くなりましたが、感想です。

まずですね、このぶっとび具合、個人的には好きです。
ぶっちゃけ、雰囲気映画の部類なんですせどね、同じ系統で言えば先日見た「ネオン・デーモン」が、おいおい、振り幅足んねーよ?もっとぶっとんでくれないと、中途半端じゃねーですかい?って出来だったのに対して、これですわ、これくらいやってくんないと!という及第点を超えましたね。

冒頭のセットの見せ方からメタな描写で入って、長めのカメラ回しからシーンを繋いでいくんですが、その転換ごとに「あれ?さっきのメタの入れ子?あ、また入れ子?」って感じで、完全にメタ描写オンリーで進行するので、ぶっちゃけストーリーらしいストーリーは無いんですよね。ずーっと主人公の狂いっぷりをメタ描写で描くだけ。で、メタを通してなんで狂ったのか、この主人公の実像はどこにあるのかという部分を追いかけていく内容。
それだけに、それだけにですよ、ことメタであるがために、ポルノ、セックスという題材がある意味安直になりかねないテーマとなってしまい、またそれが、殆どが一つのセットの中で進行する作りと重なった時に退屈さへと破綻してしまいかねないはずなんです。そんな流れをシーンごとの時間の長さの絶妙さや映像のセンスと、舞台的な演技・演出で飽きさせないという、このやろう園子温、よくまとめやがったな!という内容でした。
これはね、言葉尽くしても見なきゃわかんないってのはこういうことですよ。

ただ、このメタな内容がですね、たぶんこういうこと言われるのすっげー嫌いな監督だと思うんですが、監督自身のマインドを投射してるように見えてしまうわけですね。でまぁ、そういう風に見えちゃうとですね、先のツイッターでの炎上のこととかが「あー、はいはいw」と見えてしまい、こういうこと言ってる俺たちや、先の作品なんかに対しての気持ちの持ちようが煤けて見えるなみたいなw
でまぁ、その煤けて見えるものがですね、ある種の同族嫌悪なんですよね。
っていうか、特に庵野監督に対しての気の持ちよう?「園監督、こんな映画撮って、ああいう批判してたらさ、同族嫌悪からの粗探しにしか見えませんよ?w」っていうw

まぁ、最後のこの映画とツイッターから煤けて見える部分はおいといて、カルト映画としての完成度は充分に高いですし、何よりポルノとして、主演の冨手麻妙、知らない女優でしたが、むっちりさが良い具合の肉付きでエロかった。好みのおっぱい!

園子温監督のアンチポルノ、良作でした!機会があれば見てください!