けいすけ

うさぎ追いし 山極勝三郎物語のけいすけのレビュー・感想・評価

4.0
幻のノーベル賞


「癌出来つ 意気昂然と 二歩三歩」
日本の癌研究の祖が遺した句。このたった17文字からは、研究成功の喜びと、その裏にある苦悩がひしひしと感じられる。
山極勝三郎。
後の北海道帝国大学教授となる市川厚一とともに、ウサギを用い癌の研究を重ね、世界初の人工癌発生に成功した病理学者だ。ノーベル賞受賞の候補にもなり、現在の癌研究の草分け的存在となった。
度重なる実験の失敗、家族との関係、そして自らを蝕む病。数々の障壁を乗り越えて、日本にとっての「一歩」を創り出した山極先生には、脱帽でしかない。将来研究を志す者はぜひ観るべき。

映画としては脇役俳優の演技の拙さが若干気になったが、この作品に求めてはないし、遠藤憲一の演技は素晴らしかった。連綿と続いていく歴史は、自然と淘汰され未来の人々に喧伝されているが、当然のことながら昔の人々も我々と同じスピードで進む時間を生きていた。そして我々はその「語りえぬ歴史」の存在を決して忘れてはならないと強く実感した。
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