紅蓮亭血飛沫

BLEACHの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

BLEACH(2018年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

アニメ放送時は毎週鑑賞し、週間少年ジャンプ連載時にも度々愛読していたぐらいには私にとって“BLEACH”は思い入れのある作品の一つです。
そんなBLEACHもここ最近の実写映画化ブームに乗ったのか、遂に日の目を見たわけですが・・・。

まずキャスティングですが、概ね納得のいくものだったと思っています。
仮面ライダーフォーゼファンを呼びたかったのでは、と感付いてしまうキャスティングでしたが、一護も石田も織姫もチャドもしっくり来ましたし、違和感はありませんでした。
特に恋次を演じた早乙女太一さんは、本作で一番キャラクターに近い演技と存在感を放ってくれたのでは、と感じる程にハマり役でした。
表情・口角の動かし方が特に印象的で、恋次が実際にいたらこんな喋り方や威圧的な態度だろうな、と唸らされるものがありました。

ですが、朽木兄妹に関してはあまり好意的に見る事が出来ませんでした。
ルキアを演じた杉咲花さん、こう言うのも失礼なのですが・・・ルキアのビジュアルに似つかわしくない、浮いている感触がしました。
また、白哉を演じたMIYAVIさんは・・・カメラワーク・撮り方が悪いのか、終始鼻の穴が目立つんですよね。
白哉というキャラクター自体が絶大な強者としての風格を纏っているのでそれに準じたのか、白哉を見上げる構図・画が劇中通して多い。
そのため、必然的に鼻の穴が目立ってしまっていてどことなく滑稽というか・・・。
MIYAVIさんのビジュアル自体はかっこいいと思いますし、白哉を演じるというのも頷けるところがないわけではありませんが・・・目立つんですよね、鼻の穴が・・・。

本作のメガホンを取ったのはいぬやしき、アイアムアヒーロー、GANTZとここ数年のアクション重視原作漫画を手がけてきた佐藤信介監督。
佐藤監督は特に等身大アクション・殺陣をやらせるとかなりいい画を見せてくれる、という信頼が私の中にありまして、本作でも終盤の一護vs恋次戦は見応えありました。
BGMもこれまたBLEACHに合っているオシャレ且つ盛り上がりを重視した曲で、本作一番の見所だと思います。
対称的に、グランドフィッシャー戦といった虚戦にはそこまで引き付けられるものがありませんでした。
これはGANTZの頃から感じていた事なのですが、佐藤監督は人間よりも強大な存在とのCG戦闘において、そこまで見入られるものを感じられないというか、あまり上手ではないように感じていました。
良くも無いけど悪くも無い、平均的な質を見せられているイメージです。
等身大の戦闘がいい味を出している分、巨大な敵との戦いにおける質の差が際立ってしまっている、そんな感触がありました。

原作自体かなり昔に読んだのもあり、構成が変な事になっている・・・と言った違和感は私個人あまり感じられませんでした。
ジャンプ原作だけあって友情・努力・勝利がしっかりと備わっている構成は楽しかったですし、着々と実力を付けていく一護の特訓シーンは大好きです。
同時にルキアとの関係を築いていくペース配分も良かったですし、最初は「この人がルキア・・・?」とネガティブなイメージしかありませんでしたが、本編が進むごとに幾分か許容出来るようになった、不思議なマジックを実感させられました(ビジュアルは兎も角、台詞の発音・トーンはルキアに近かったな、と)。

クライマックスの一護vs白哉も、これまたしっかりと味わい深いシーンになっていて嬉しかったです。
この時点での一護では逆立ちしようが何をしようが、白哉には敵わない。
原作のように完敗するにしても、あれはまだその先の物語へと続くからこそ許された完敗であり、本作はこれ一本で完結する映画なのです。
そのため、原作のように悲観的な完敗を描くわけにはいかない。
そんな事をしたら本作が丸々バッドエンド風味で、後味の悪い物になってしまう。
実写映画且つ今が旬の俳優を起用している作品なわけですから、原作を知らない人にもBLEACHを認知してもらえる絶好の機会であり、これを機に原作に触れてもらえるきっかけにもなり得るわけです。
そんな時にこの実写映画を通して「あれだけ主人公が頑張ったのに、報われない結末だった作品じゃん。別にいいや」と捉えられかねない可能性を生む事となってしまう。
なので、尚更原作のような有無を言わさぬ完敗は描けない。
その点を本作はどうするか、というのが本作の肝とも言える重要な要素でした。

白哉の圧倒的な強さを前に為す術も無く、地べたを這う事しか出来ない一護。
それでも立ち上がり、その度に白哉の前に立ちはだかる。
また白哉に一蹴され、今度こそもう・・・と思わせられるところで「ルキアを連れて行くな」と白哉の足を掴む様は紛れも無く黒崎一護でした。

ウルキオラ戦で、彼の強さの前に追い詰められた上に首を掴まれた一護が発したあの言葉が思い出されます。
「てめえが俺より強かったら・・・俺が諦めると思ってんのか?」

そんな一護の様を見て、これまで積み上げてきた関係があるからこそのルキアが下した突き放し・別れ・・・いい、とてもいいです。
心地よい余韻が溢れてきました。

もっとここを改善して欲しかった、という箇所はいくつかありますし、熱心な原作ファンは本作に好意的な感触を抱けないかもしれませんが、私は思っていた以上に楽しめました。
こればかりは本作に限らずなのですが、原作を題材にした実写作品ってそれこそ個人個人が“原作にどれぐらいの愛着があるか”で大きく左右されると思うんです。
それほど原作が好きでない人からすればまぁこんなもんじゃないか、とあっさり受け止める事が出来たりしますが、原作が好きな人にとっては最早“実写作品をやる”ってだけで否定的な感情が出て来てしまって、実写作品自体の評価が辛辣になる可能性が十二分にある。
本作も同様で、私もBLEACHという作品は当時アニメや原作を読んでいたぐらいには好きでしたし、実写作品決定の告知を聞いた時は複雑な気持ちでした。
が、本作も本作でそれなりにBLEACHとしての味が、大切な人を護りたいという軸を元に奮闘する黒崎一護が堪能出来たので見た甲斐はあったな、と好意的に捉える事が出来ました。

死神代行編、という事でしたが尸魂界編をやるにしても本作以上に予算面や尺の長さがあるのでやるにしても、最低でも二部構成ぐらい用意しないと厳しいですよね・・・。
結果的にルキアに死神の力が戻ったので、もし続編があるとしても尸魂界編は飛ばす・・・という案もありますが。

何はともあれ、かなり悪い出来、というわけではないので一見の価値はあるかと。
俳優ファンは勿論、BLEACHファンにも・・・いや、後者はちと厳しいですかね・・・。