垂直落下式サミング

BLEACHの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

BLEACH(2018年製作の映画)
3.5
強い霊感を持って生まれたために人の魂を喰らう悪霊「虚」に命を狙われている男子高校生が、虚を狩る存在「死神」だと名乗る謎の少女と出会う。成り行きで彼女から死神の力を貸与されたことで、死神代行として戦いに身を投じていく…という漫画の実写化。
僕にとって、漫画BLEACHは結構大事な作品だったりする。設定の奥深さと世界観の広がりに、恥ずかしながらいまだに想いをめぐらせる時があるくらいだ。
僕が東洋的な価値観を好きなのは、この漫画における「現世」「尸魂界」「虚圏」という霊魂のバランスによって釣り合っている輪廻の構造に、少なからず影響を受けているからだと思う。
シャープな絵柄と意味深なストーリーから中二病と同時に流れ込んできたのは、世界がそういう円環のなかに成り立つのなら、他より秀でたり枠からはみ出したりするよりも、中庸を目指すことが正常で正しいとする甚だ理知的な死生観だった。あんまり言われない部分だけれど、この舞台設定はスピリチュアル漫画として、かなり進んだものだと思う。
もうひとつ、アクション漫画としての見応えが他と比べて群を抜いていたことに言及しないと嘘になる。死神の武器である斬魄刀が分かりやすく形状変化し固有能力を有して、始解(better)を経て卍解(best)になるのが男の子好みだし、出てくるキャラがみんなかっこいいんですよね。数話しか戦ってない敵とかも、印象に残るやつが多くて好き。
アニメの主題歌を歌ってたAqua Timezもアルバム全部持ってるくらい大好きだった。00年代頃から台頭し最近名称のついた価値観「エモい」が、僕ら世代には最もしっくり来るバンドである。
昔は、灼火砲も蒼火墜も詠唱すらすら言えたのにな。「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ」までは一緒だけど、そのあとが思い出せなかったりする。老いを感じる。済まぬ。
映画は、それなりにストーリーはうまくまとめられていたのだけど、何ヵ月も似たようなことやってるのにぜんぜん話すすまないのが良くも悪くもBLEACHの味なので、映画として二時間にまとめてしまうと、らしさが消えて原作の雰囲気からは遠ざかってしまっていたように思う。リアルな時間表現への置き換えは、連載漫画を映像化するにあたって必ずしも正解では無いようだ。
対して、一護、雨竜、チャド、白哉、恋次など、主要キャラクターのなりきり度は及第点。公式な形でのコスプレ撮影会として鑑賞することが可能。なかでも恋次は、その出で立ちから所作に至るまで超恋次だった。その点で言うと、野郎ばっかりに気を遣ってたのが不満。これといった必然性は要らないので、片っ端から女性キャラクターを出演させてほしい。
ツンデレ百合の砕蜂、犯罪ボディの松本、不幸系ヒロインの雛森、ママみが強いのに実は最強な卯ノ花、DV被害者のネム、グループアイドルを取り入れてきたバンビーズ、最終回のイメチェンで人気上昇の勇音、みんなかわいい。
なかでも、褐色美人ふたりははずせない。夜一さんに性癖を狂わされ、ハリベルで止めを刺される。弐擊決殺!