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GODZILLA 怪獣惑星のニトーのレビュー・感想・評価

GODZILLA 怪獣惑星(2017年製作の映画)
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 設定から何から何までサンプリングの映画、サンプリングのサンプリング映画でした。設定も演出もキャラクターもどっかの作品から引用してゴジラという着ぐるみを被せた作品という印象なので、自分としてはこれといって語る余地も熱量もないのですが・・・。
 映画公開前のメディア展開がいかにも「設定厨が集まってわいわい設定だけ決めて作った同人」的なにおいがしていたんですが、実際に見ても「まあこんなもんか」という域を出ないフッツーの作品でした。
すごく箸にも棒にも掛からぬ、自分の琴線には触れてこなかったので特に書くことがないんですが、せめてリアルタイムで劇場で観た作品に関しては何か書き残しておきたいという思いがあるので無理やり書きます。

なので、とりあえず観ていて思ったことを散発的で散漫に記述。

・冒頭の老人爆殺、あれを立て続けに2回も同じシーン流したのはなぜでしょうか。邪推になるけど上映時間の穴埋めなのかな。

・主人公のハルオが完全にエレン。巨人をゴジラに置き換えただけなのですが、エレンに対してハルオは描写が色々と雑。まずどうして子どもが親と一緒に逃げていないのかが劇中で説明されていない。続編でもしかすると「ハルオの親はメカゴジラの開発に関わっていて」で、メカゴジラをハルオが動かせる論拠にするつもりなのかもしれませんが。ってそれシンジくんか。
そういえば「挨拶は抜き」とか前置きしておきながら短めの演説はしてたっけ。

・音楽がちぐはぐで統一感がない。

・宇宙人を2種族出した意味が今のところ不明(だから続編商法で情報小出しにすんなっての。こちとら映画一本分の金払ってんだから)。なぜか黒人と白人っぽい。
まあ続編で身内争いを引き起こさせるためなのかもなーという予想は立てられるけど、船の乗組員って4000人なんでしたよね。これ以上減らしてどうやって繁殖するつもりなんだろう。などという邪推から邪推するという不毛な自分の思考回路に辟易・・・。

・パワードスーツとか兵器があんだけあって食料が不足しているのとかもいろいろ疑問。少なくとも劇中で説明されない。

・諸々の描写がいろんな作品の引用(これが悪いというわけではなく)に見える。ゴジラの熱戦なんかはまんまゼルエルの眼ピカっチュドーンだし。いや好きなんですけどね、ここ。

・冒頭のクレジットで「シリーズ構成」なんて臆面もない文字がデカデカと出てきたときはさすがに笑った。ドラマとか連続アニメならともかく、映画でシリーズ構成って言葉見るの初めてな気がしますが、あれかな、指輪物語だと一作目からそんな感じのクレジットされてたりすんのかな。MCUみたいに少なくとも「アベンジャーズ」以前の単体で完結しているようなものならまだしも、最初から三部作で作られるといろいろと面倒なので東宝は反省してください。進撃の巨人から学んでねえんですか。


どうしてこんなに自分の文章に熱量がないのかといえば、それは映画に熱量がないから、だと思う。GIGAZINEのインタビューを読めばわかりますが、瀬下寛之監督は端からシンゴジを超えようとかそういう意気込みがあるわけではなく、東宝から打診された企画を「無理無理」と言いながらもとりあえず作った感じであり、身内でわいわい楽しく作ったというようなことが言われている。

本家本流の流れを汲みながらアップデートしたシンゴジの派生、枝葉としてアニゴジを位置づけているようですが、見事に状況の逆転が起こっているのが面白い。
シンゴジに関して春日太一が言っていたように、日本映画の主流から外れた位置にいた北野映画や庵野映画のハイテンポでベタつく演出を排除したものがシンゴジラによってメジャーに躍り出たわけですが、このアニゴジはその逆向として位置づけられるように思う。

あと画面のレイアウトがわかりにくいというか、カットの繋ぎがわけわからんくなってる場所がいくつかあったかなぁ。

ゴジラが突然現れるところとか、本当に突然画面の横にいるもんだから心霊映像か何かに見えたり、そもそも目視で確認できる距離なんだから気づけよとかいろいろ、初代トランスフォーマーのアニメに対するツッコミができてしまう演出のユルさが結構目立った気がする。

自分のブログで自分なりに真面目にゴジラについて考えていたのが恥ずかしくなってくる。

とはいえ「こんなのゴジラじゃない」とそういう面倒なことを語りだすといろいろと面倒なので、これくらいの作品にしてくれたことは労力的にはよかったかもしれない。
それと今回のゴジラとシンゴジラを劇場に観に行って気づいたことなんだけど、思いのほか自分はゴジラが好きなのかもしれないということ。

頭ではそこまでゴジラに対して昔ほどの思い入れがないにもかかわらず、ゴジラ上映直前にやけに胸が動悸するんですよ本当に。不安と期待で。
むしろ、不安感で言えばシンゴジラの方が上だったし。そういう意味で、思いがけない自分の内部をこのアニメゴジラで気づかされたという体験ができたのはよかった、かも。


なんか貶してばっかですけど、ゴジラと爆炎の組み合わせはやっぱりいいですよ。素立ちだとダサいけどどっしりと構えてるゴジラはかっこいいので、あのカットは評価してあげてもいいんじゃないかな。

あとはまあ文字とかメカのフェティッシュの問題で楽しめるか楽しめないか結構変わってくる気もするので、そのへんの趣味嗜好が合う人は見てもいいかも。ああいう形状のパワードスーツがかなり敏捷性が高いっていうのはちょっとどうかと思うけど。


とはいえ、こんな感じのゴジラが毎年劇場にかかって(もちろん一作品完結)、平成VSシリーズ的な「毎年恒例感」を出すことができて、数年に一回シンゴジみたいなのが出てくれば少なくともゴジラというコンテンツは更なる延命が可能になるかもしれんです。

あとまあ、KUBOを観てしまったというのも、このゴジラへのやっつけ感が増している原因としては結構あるかもです。あれだけ映像表現だけで感動を与えてくれるのに対してゴジラのほうは別に「ゴジラでCGアニメが初」という以上のものが何もないだけに、表現手法そのものを一つの売り物にしていたのが逆に足を引っ張ったのかも。

あと、売上がそこまで伸びないのは製作側と客層の食い違いがあるからだとは思います。ゴジラファン以外のアニメファンを取り込むという製作・制作側の意向って、どっちみち目指す方向としてはマスではないでしょ。
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