すずきたけし

オペレーション・クロマイトのすずきたけしのレビュー・感想・評価

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マッカーサーの伝記作家ジェフリー・ペレット曰く、「マッカーサーの生涯に軍事的に天才だったといっていい日が1日あった。1950年9月15日である」

朝鮮戦争における仁川上陸作戦はマッカーサーにとって大博打であり、仁川上陸作戦が絶頂期。
ジャーナリストのデイヴィッド・ハルバースタムは『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争』の中でマッカーサーをかなり辛辣に評価しているけど、本作はそんなマッカーサーが主人公ではない。
なにせ韓国映画なので、北朝鮮占領地の仁川港の機雷敷設位置の情報を仁川上陸作戦前にマッカーサーの元へ届けるために潜入した韓国軍兵士たちの激闘。
まともに考えたら機雷敷設の地図を銃撃戦であからさまに奪ったら仁川上陸作戦がバレますって笑
逆に僕が北朝鮮の偉い人なら、ワザと盗ませて機雷を増やすか、偽の地図を渡しますよ。

先のハルバースタム曰く、マッカーサーにツキがあったのは、金日成が無能だったからと身も蓋もないこと書いてありますが、当時中国の毛沢東は高い確率でマッカーサーが仁川に上陸すると踏んでたんですね。
太平洋戦争時、マッカーサーは日本軍守備隊の手薄な島々から攻略して日本軍主力を孤立させてから攻略していった“飛び石作戦”で成功してます。毛沢東も敵のもっとも弱い部分だけと戦い、正面から戦わない戦術(遊撃戦論)で成功してます。

また、当時北朝鮮軍により国連軍と韓国軍が釜山まで押し込められた状況で、マッカーサーは北朝鮮の長く伸びた補給線を断つという太平洋戦争からの基本戦術で仁川上陸作戦を立案してますが、これは毛沢東も同じことを考えたからでしょう。
しかし金日成にはそのような戦いの教訓が皆無だったのです。

実はこの映画のあと、仁川上陸後からソウル解放でマッカーサーの運も尽きていき、三十八度線を越えてからの中国軍との激闘が凄まじいのですが、それはまた別のお話。
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