木葉

否定と肯定の木葉のレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.6
こういう映画は日本では作られないだろう。原題は否定。
ホロコーストの事実を否定する学者とホロコーストの真実を追求する者の裁判。何しろホロコーストの真実の著者が訴えられ、被告となるのだから。ホロコーストがなかったと主張する悪を見事に演じたティモシースポールがまぁ憎たらしくて、レイチェルワイズを喰ってしまう存在感。
感情的にならないために裁判では主人公、アウシュビッツの被害者にも喋らせない。
どのようにして歴史の弯曲を防ぐのかというのを主人公と共に後半の法廷劇を通して見守ることになる。
日本でも、従軍慰安婦、南京大虐殺など、実際あったことを捻じ曲げ、否定しようとする人がいる。
私たちは自分たちにとって都合のいいことは、飲み込もうとするが、自分たちにとって不利なことには目を背けようとする。
情報操作に長ける者の影響で虚偽であってもフェイクニュースが横行し、偏見や差別で情報が錯乱する時代、情に流されず理性を持ち、知り、考えることがいかに重要かと思い知る。
映画としての力は弱いが、公平公正の難しさ、言論の在り方、歴史の真実とは考えさせられる。
知性こそ、失ってはいけない、人間の唯一無二の武器だと痛感させられる、硬派な良作だ。
木葉

木葉