ノラネコの呑んで観るシネマ

否定と肯定のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.5
ホロコースト否定論者が、著書で自分を批判した歴史学者を名誉毀損で訴えた実際の事件の映画化。
面白いのは英国の司法制度では、被告側に立証責任があるという点。
訴えられたリップシュタット教授は、名誉毀損でない=ホロコーストの実在を裁判で証明しなければならない。
前半は資料を集め、アウシュビッツを訪れての裁判準備で、後半が裁判本番。
何が正しいのかは彼女も周りも知っている。
難しいのは原告側が学問としてホロコースト否定してるのではなく、事実を知りながら都合のいい歴史を作るため嘘をついてことを立証しなければならないこと。
そうでなければ言論の自由の封殺になってしまう。
仮に裁判で負けても歴史的事実は変わらないが、否定論者に力と場を与えることになり、それはユダヤ人であるリップシュタット教授には耐え難い。
これは教授が裁判を受けて立つべきだったのか、歴史を司法で裁けるのかを含めて示唆に富む話。
論点は違えど、今韓国でやってる「帝国の慰安婦」裁判との符号など実に興味深い。
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1078.html