グラッデン

否定と肯定のグラッデンのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.2
第二次世界大戦のホロコーストの真偽を争った裁判を描いた実話に基づく作品。

被告が証明を求められる等、英国特有の裁判制度の下で繰り広げられる、ホロコースト否定論者と歴史学者の弁護側による法廷戦術の駆け引きは非常に見応えのある内容でした。

「話が通じない」歴史修正主義者の原告と彼を否認(本作の原題)する弁護側の構図は、ポスト真実が賑わせる現在に響くテーマ設定だと思います。被告である主人公は原告の発言に対して感情的であり、自ら名乗り出て来た被害者たちを証言に立たせようとする。この気持ちには鑑賞者たる自分も同じ思いがこみ上げました。

そんな彼女を制して粛々と事実と偽証を積み上げる弁護団チームに当初は冷酷さを感じますが、その真意が明らかになるとともに、裁判という舞台に求められるものとは冷静さ、そして疑いようのない事実をレンガのように積み上げいく過程にあると痛感させられました。

凄腕の弁護士が活躍する痛快さとは真逆の内容ですが、法律を学ぶ法学部生にもオススメしたい重厚な法廷劇。そして、表現の自由=多種多様な考えを持つこと・論じることの自由は認められるべきであるが、それに対する説明責任を放棄してはいけないという本作のメッセージはメディアを含めた多くの人に届いて欲しいことだと思いました。