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否定と肯定のマーチのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.6
【省略レビュー】

簡単に言えば「ホロコーストは有ったのか無かったのか」を争う裁判の話。

否定論者の自称学者が無かったという見解を自分の中で正当化してしまっていて、ひたすら理不尽なロジックで肯定派を攻めていく映画だと思っていたら、意外にも(というか当たり前だけど)肯定派にずっと勝機があるので、一度意外な展開を見せるものの法廷闘争としてはそこまで真新しいものは無かった。

「イギリスの名誉毀損訴訟では被告側に立証責任がある」ということを知らなかったのですが、この制度こそが今作を面白くしている要素のうちの1つであり、歴史上当然あるとされていることを改めて証明するのが実はいかに難しいことなのかというのを実感しました。

歴史そのものの信憑性まで危うくしてしまうので、肯定派からすれば絶対に負けるわけにはいかない裁判であるということが引き金になって、ほんとは法廷で論破してやりたいし経験者の声を届けたいのに戦略的に出ていくことのできないデボラの葛藤、冷静を保ちながら着実に勝利への道筋を辿ろうと奮闘する弁護団の姿、それらにホロコーストという負の歴史が重なってエモーショナルな展開を見せるのですが、こちらが本題であり、案外法廷闘争はそこまで重要では無かったりするんですよね。そこがまた深くていい。

さすがに強制収容所のシーンは観ていて居た堪れなくなりました。若干再現シーンなども含まれていて心がしんどかったですが、役者陣の演技は徹頭徹尾素晴らしくて作品自体とても見応えがありました。


【p.s.】
忙しくてレビューをしっかり書く機会が無いので短めに今年観た作品のレビューを投稿しています。
暇があれば正式なレビューと入れ替えますが、きっとそんな瞬間は訪れないでしょう。
だって、私ですからね。
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