恭介

否定と肯定の恭介のレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.0
実話を基にした法廷劇。スピルバーグ監督も支援してたようだが、勉強不足で知らなかった。教えてくれてありがとう、映画。

アメリカのホロコースト研究家の女性、リップシュタットはホロコースト否定論者であるアーヴィングを嘘つき呼ばわりした、と彼から名誉毀損で訴えられる。

これも今回勉強になったのだが、アーヴィングは敢えてイギリスで訴えをおこした。
それはイギリスでは、訴えられた側に立証責任が発生する為。つまり、彼女がアーヴィングは嘘を論じていると証明しなければならない立場になる。

この映画は彼女が雇った弁護団チームVSアーヴィング1人、の裁判を描く物語。

リップシュタットには、今や007の奥様で、ナイロビの蜂でアカデミー賞を獲得し、みんな大好き(笑)コンスタンティンでキアヌと共演したレイチェル・ワイズ。
歳を重ねるごとに魅力を発揮し、素晴らしい演技を披露してくれる。

そんなリップシュタット。最初から高飛車で上から目線な感じ、自分以外の人は基本信じないという態度でなかなか感情移入しにくい女性だ。すぐに感情的になる為、弁護団チームとも衝突する。

基本的にはリップシュタットとアーヴィングの法廷劇なんだが、弁護団とリップシュタットのチームプレーのドラマ部分も大きな要素となっていて、彼らの準備段階からのやり取りも見応えがある。

リップシュタットが、ホロコーストを扱う裁判なのに収容所の体験者の話を法廷でさせないのはおかしい!と弁護団に詰め寄るが、彼らは感情論より理論的に攻めるべきだ!と自分達の信念を貫き、頑として許さない。

狡猾なアーヴィングは過去にも自らの否定論を語る道具として、体験者自身を揶揄し否定した過去がある為、弁護団はこれ以上彼らを傷つけたくないというもっともな理由がある。

この弁護団チームの中心人物で、法廷弁護士役を演じるトム・ウィルキンソン。
この裁判の良心とも言うべき立場の人物を見事に演じきっており、彼の演技に釘付けだ。
裁判も終盤に差し掛かろうという時に、ようやくリップシュタットが彼を信頼し心を開くシーンは2人の演技により胸が熱くなる。ここは裁判を通じて彼女自身が人として成長していく物語でもある事がよく分かるシーンだ。

そして裁判の最終日。弁護団の用意周到な活躍により、誰の目から見てもリップシュタットが勝つ、と思わせておいて、まさかの裁判長の見解。おい、お前がそれ言うかっ!?(笑)で、一気に裁判の行方が分からなくなる。

だから判決を聞くまでドキドキもんだ。
さて、判決はいかに!

史実を知らないまま見る方が映画としては
楽しめるかもしれない。
最初から最後まで芸達者な役者さん達の演技もあり一気に観れるドラマに仕上がっている秀作だ。

実際にポーランドのアウシュビッツでロケを敢行しているのも見どころのひとつ。
ここでの撮影の時にレイチェルとウィルキンソンはどんな気持ちで演じたのだろうか。
恭介

恭介