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否定と肯定のkyokoのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.7
公開当時はなんとなくスルーしてしまった作品。
劇場で観たかった!とまではいかないけれど、なかなか面白かった。

まず興味深いのがイギリスの裁判制度の特殊性。
立証責任は被告人が負うべきって、被告人のハードル高っ。
被告人に陪審裁判にするかどうかの選択権があるというのも面白い。
事務方の弁護士と法廷に立つ弁護士がいるというのも。
(私がやるなら断然事務方だなー、やれないけどw)

それぞれのキャラクターが分かりやすい。
アーヴィングはその見目の悪さといい、苛つかせる弁論といい、ヒール役として徹底している。
リップシュタットの感情的になりやすいキャラが少し大げさなように感じるのは、弁護団の冷静で明晰な頭脳をよりあざやかに浮かびあがらせるための演出だったりするのかな。トム・ウィルキンソン演じるリチャードのプロフェッショナルぶりが最高にかっこいい。
裁判のシーンは非常に見応えがあった。

ただ、裁判終わってもまだごちゃごちゃ言ってるバカはほっとけ、という終わり方は、正直「なんだそれ?」と思う。結局はそれなのかと。
歴史の歪曲は、くりかえし目にすることで人間の潜在的な意識にいつの間にか刷り込まれ、人を呑みこんでいく怖さがある。真偽の判断基準がないまま生活に根付いてしまったインターネットにより、ある意味アーヴィングよりもめんどくさい「純粋に信じちゃってお話の通じない人」は生まれやすくなったはず。
安易に「無視すればいい」は危険だと思う。

と、余計なことを考えてしまい、スッキリ!とはならなかったのが残念。。。
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