ペジオ

否定と肯定のペジオのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.2
ホロコーストはあります!

「歴史的事実」を扱うむつかしさ

「法廷劇」としては、実話で結末は割れてるし、ピンチらしいピンチも無いので単調だったと言わざるを得ない
勉強不足なので映画がどこまで事実に即しているかはわからないが、映画だから「脚色」も「編集」もあるのだろう
無論それは製作側の「意図」をもって行われる行為だ
実際映画を観てると「敵役」であるアーヴィングが終始見当違いのアホに見える
リップシュタットは意思が強くユーモアにも長けた魅力的女性、アーヴィングは自分の利益の為であれば手段を選ばない下品な中年男性(これは「敵役」の枠を超え「悪役」になってしまってるとすら思う。)という「印象」を強める様なキャスティングや脚本は、それが例え「事実に即している」「政治的に正しい」としても、この映画の主張するテーマとは少し矛盾するのではないか
もっと言えば「映画的に正しくない」
映画で描かれた歴史修正主義者のやり口にこの映画自体が陥っていないか…というデリケートな部分は製作側も考えていたのだろうが

まあ、思いきって「アーヴィングの主張にも理がある」という展開があると、法廷劇としてスリリングさも増したであろうが(これが「映画的正しさ」だろう)、そうすると映画の主張自体が「=ホロコーストは無かったかも」に拡大解釈されかねないのでこれまた面倒臭い

トム・ウィルキンソン演じる弁護士の社会的責任を踏まえたプロ意識なんか凄くカッコ良かったが、この映画で僕が感じた気持ち良さの大半は結局「ロジックでバカを嬲るのは愉しい」という「事実」であった
それに対しては「否定」も「肯定」もしない
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