ニクガタナ

否定と肯定のニクガタナのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.5
ナチスによる大量虐殺はなかったと主張するホロコースト否定論者デイヴィッド・アーヴィングを、著書で非難して起こされたユダヤ人女性歴史学者デボラ・E・リップシュタットに対する名誉毀損訴訟。その顛末を描くガチな法廷劇。ホロコースト否定論の存在もさることながら、それがある程度支持されていたということがまず驚き。ホロコーストの存在を法的に実証するなんて簡単だろうと思ったが、敗戦時ナチスによる証拠隠蔽工作があって簡単じゃないとは知らず。ガス室で使ったガスとシラミ駆除用のガスは同種だったこと、それがガス室は無かったとする論拠になっていたことなど知らなかったことが多く興味深い。2000年当時に裁判長と法廷弁護士が、伝統重んじ中世の髪型鬘被るイギリスの法廷模様は失礼ながらちょっと滑稽。デボラ役のレイチェル・ワイズ、弁護団の戦略によって法廷では証言せず、やきもきしながら見守るだけで見せ場無く主演女優としてなんか気の毒。後半はすっかりトム・ウィルキンソンら眼鏡キャラ弁護団が主役な感じ。ティモシー・スポールが悪役然とした顔立ちでアーヴィングを憎たらしく好演。彼をイラつかせるために、目を合わせないで証言するって策略がちょっと子どもっぽいが効果あった模様。なかなか観応えのある知的な舌戦。デボラの弁護団への不信感が徐々に融解していく法廷外の細かいエピソードの挟み方がニクい。紙コップでビンテージワイン飲むお疲れ会が和む。
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