車の運転中何かをひいてしまった女が、「人間を轢いたかも」という疑念に苛まされ続けるという映画であり、そのひいた何かは我々観客にはチラ見しかされず、しかしどうにも犬のようにしか見えないのだが、見ているうちにこっちまで訳が分からなくなってしまう。
この視界を制限すると言う演出方法は最後まで続く。例えば主演の女はブルジョワジーで、多くの人に囲まれている生活をしているが、その人々の頭の部分だけ、フレームからはみ出ている。これが異様な印象残す。また offscreen からの声もよく使われる。
劇中へこんだ車の話がよく出てくるのに一向にそのへこんだ部分の画を見せてくれないのである。冒頭の車についた子供の手の跡と、ラストで突然ホテルのロビーから人が誰もいなくなるショットが素晴らしかった。