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牝猫たちのeyeのレビュー・感想・評価

牝猫たち(2016年製作の映画)
3.6
牝猫たち (2017)

ロマンポルノシリーズ4本目の鑑賞

白石和彌監督の作品では

『ロストパラダイス・イン・トーキョー』
『凶悪』
『日本で一番悪いやつら』
『サニー』
『止められるか、俺たちを』

今までを含めると これで6作品目の鑑賞

>眠らぬ街。3人の女。職業・風俗嬢

舞台は池袋が中心

"極楽若奥様" という風俗店(デリヘル)
その店で働くそれぞれ背景の異なる3人

雅子・結衣・里枝の源氏名をもち 
互いの本名は知らず 職場で顔を合わせる

・雅子:ワーキングプア
・結衣:シングルマザー
・里枝:不妊症

といった諸問題を抱える中でお金を介在して
自分の問題を抱えながら男性客に買われていく

3人を買っていく男性客も背景が異なり

・裕福な引きこもり
・配偶者に先立たれた独居生活の老人
・売れないお笑い芸人

と様々な人物達が3人を買う

基本は男性に呼び出され性行為に及び
彼らの都合のいい欲望の中に飛び込む

彼女達は明日への希望を見出すわけではなく
身体の売買の日々が淡々と描かれる

この映画のタイトル "牝猫たち"

通常は "雌" という漢字を使うはずが
常用漢字以外の"牝" が使われている

家畜動物に使用される漢字を選んでいる事で
"風俗店で飼われている" とも捉えられる

彼女達は夜を中心に活動する夜行性動物
タイトル通り "猫" の習性を見せる

男性達の欲望の中に そろりと 飛び込み
自分のその時の気分で行動を変えていく

けれど 安心できるテリトリーは見つからず
心の置き所は始終見つからず彷徨っている

3人は飼われつつ 何かの大きな目標や
大きな欲望・動機は特別ないように思える

一方で 物凄く "男性" から何かを欲している

彼女達は見知らぬ男性から買われる際に
自身には「快楽は伴わない」と明言していて

>愛とか要らないし
>それは皆んな同じでしょ

愛も除外し お金に価値を見出す

その反面 男性達から向けられる"眼差し"
を異様に欲している様子が窺える

金銭を介するドライな契約に潜む本当の
気持ちの置き所(承認)を常に模索している

老若男女問わず世の中において
ところかしこ心の寂しさで溢れている

その「ココロのスキマ」を埋めるべく
いつも彷徨って移ろい続ける

サービスはセックスという形で描かれるけど

藤子不二雄Ⓐの漫画『笑ゥせぇるすまん』
にも通ずるどことなく陰虚な感じもある

閑話休題

彼女達は猫のような可愛らしさがあって

突如擦り寄るもプイっといなくなるような
誰にも縛られない自由気ままさがある

この映画は社会的な問題のメタファーを映し
結衣:シングルマザーの描き方は非常に現代的

母であるよりも1人の女であることにより
足は地についていなくて常に浮いている

彼女は自身の子を虐待し続けていて
子どもにしっかり向き合ってはいない

経済的貧困問題も踏襲されている
心の闇は深く何も解決はされない

今の世の中は情報が先頭し 非常に混沌

目的意識のなさ・承認を求め続ける人物で
溢れ返っている中で本当の意味で満たされる
ことは決してない

フィクションでありながらどことなく
ドキュメンタリーテイストも感じさせ

自我を追求し続けることによる不安感や
個人の色濃い感情を描き出す姿が見れる

ロマンの名にふさわしい作品だと思う
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