菩薩

榎田貿易堂の菩薩のレビュー・感想・評価

榎田貿易堂(2017年製作の映画)
4.2
タバコには二種類ある、しっかり守られているけど片手じゃ取り出しにくいボックスタイプと、片手でもぽいっと取り出せるがどうしても葉っぱが散らばってしまうソフトタイプと。同じ様にって訳でもないが、人の秘密にも二種類ある、誰にも知られたくない秘密と、本当は誰かに知って欲しい秘密と。タバコも人生もやめ時ってのがある、喫煙者の多くはタバコなんてやめちまった方がいいに決まってると思いながらも、一度ならず二度三度と一時的な禁煙を繰り返し、結局吸い続ける人は何かしらに託けて、「千円になったらやめる!」なんてなんの根拠も無い自信を覗かせながら、いつまで経ってもダラダラと吸い続ける。これまた同じ様にって訳でも無いが、人の一生ってのも「今日から俺は!」なんて言いながら、二度目の人生、三度目の人生と何度も生まれ変わったつもりになり、過去を脱ぎ捨て新たな人生へと踏み出そうぜなんて、そうやってダラダラと死ぬまで続いていくものだ。だが残念ながらタバコと違って人生の「終わり」ってのは一回しか無い、死んだら終わり、THE END。自分の秘密を守ったり、他人の秘密をバラしたり、他人と秘密との綿密な距離感を保ちながら、時に涙し、時に怒り、時にバッカだねぇ〜と笑いながら、朝日が昇るから起きる訳でもなく、目覚める為に旅をし、教えられる物に別れを告げて、届かない物を身近に感じ、結局最後は人間なんてラララ〜と生きていく。超えていけそれを、超えていけそこを、今はまだ人生を語るのも諦めるのも早い、進め、今はまだ。

なんて真面目な風を装いながら、結局俺がこの映画について一番言いたいのは、この作品は伊藤沙莉が「ちんちん・たまたま」と口走り、自分の旦那のモノと同じサイズの木彫りの張り型を手でシコシコし、先端を優しく包み込む、そんな映画であるという事。バファリンが「有効成分」と「優しさ」で出来ているなら、この映画は「下ネタ」と「優しさ」で出来ている、作品自体が言うなれば、人里離れた山奥にひっそりと佇む珍宝館の様なものだ。ちなみに俺は99%が「下ネタ」で出来ていることは言うまでも無いだろう、俺はいつだって、右手中指と薬指の爪は短く切ってある(出番は無い)。梅雨時のジメジメを吹き飛ばすのにはもってこいの作品だと思う、渋川清彦が観られりゃいいくらいの気持ちで臨んだら大いなる嬉しい誤算、笑った笑った泣いた笑った。
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