えりんぎ

君の名前で僕を呼んでのえりんぎのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.2
上質な文学作品を見ているよう。
瑞々しく、繊細で、美しくて、知的さを感じる作品。

北イタリアの田舎町の夏の風景が、素晴らしい。
眩しい日差しのもとで、緑に囲まれた一本道を自転車で駆け抜けるシーンや、
二人が飛び込む川、キラキラした反射、冷たそうな水しぶき、フレッシュなフルーツの描写、毎朝朝日の差し込むお庭でいただく朝食や、木陰でのランチタイム。食事シーンの食器の音や風のそよぐ音まで、風景と音全てに夏のバカンスの魅力がつまっていて、夏という光り輝く季節の瑞々しさが全てから感じられる。そういう意味で夏にこそ見たい作品。

美しいのは風景だけでなく、エリオを演じたティモシー・シャラメも。神が作りたもうた美術品のよう。ピュアで官能的で知的なセリフや息遣い、表情。彼の美しさが、作品を一層光り輝くものにしている。
その分、オリヴァーを演じたアーミー・ハマーがイマイチ。なぜエリオほどの美しい少年がこんな毛むくじゃらのおっさんに恋をしたのか理解できない。エリオへの仕打ちも腹立たしいし。これは個人の好みの問題なので仕方ない。
ティモシー・シャラメが高く評価された話題のラスト、エリオのワンショットで3分半長回しのシーン。感情を映し出す演技が見事。

ひと夏の恋、と言ってしまうのはちょっと乱暴なくらい、奇跡のような一生ものの恋を経験した、少年の夏の物語。
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