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君の名前で僕を呼んでのnomovienolifeのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

時は1983年、イタリアを舞台に、ユダヤ人大学教授の息子エリオと、同じくユダヤ人で、教授の助手として6週間滞在するオリバーが、細胞レベルで恋に落ちるお話。原作は、アンドレ・アシマンの2007年に出版された同名小説。監督は、『胸騒ぎのシチリア』のルカ・グァダニーノ氏。初めのシーンからぐっと引き込まれるイタリアの独特の景色、美しい少年とハンサムな美青年との冷と熱の間での駆け引き、絶妙なサウンドが、見事にマッチし、言葉にならないほどの芸術的感性とエロティシズムと知的好奇心をくすぐられる、完成度の高い素晴らしい作品。エリオを演じたティモシーは、イタリアにオリバー演じるアーミーより1ヶ月前から、言語(父親がフランス人のため、フランス語と英語はネイティブ)に加え、ピアノ(元から弾けた)、ギターの猛特訓を受けていた。オリバーがイタリア入りしたのは、撮影の約1ヶ月前。作品内で、エリオがオリバーを連れて街を案内したり、二人で自転車で出かかるシーンが出てくるが、実際、英語を話せる相手は互いしかおらず、ティモシーはアーミーを連れて町を案内し、その後も撮影、夜の語らい、週末を通じて密な時間を過ごした。おかげで、本番には自然に役に入ることができた。アーミー曰く、このように共演者を親友とまで呼べるほど仲良くなったのは初めてだそう。ティモシーも心からアーミーを信頼することができたとインタビューで語っている。因みに双方ともユダヤ人の血筋(ティモシーは母親がユダヤ人で、アーミーも有名なユダヤ人石油王を曾祖父にもつ)。リハーサルは一回だけ、グァダニーノ監督にバックヤードに呼び出された二人は、いきなりシーン67をしてみてくれという指示を受ける。それはただのキスシーン。演じるが「もっと感情を込めて!」との監督の指示、二人は感情を込めて何度もキスシーンを繰り返した、ふと気がつくと、監督は二人をそのままに、どこかに行ってしまったそうだ。微笑ましい二人のインタビューの数々も見応えがある。

実はこの作品、原作を読んでる人は知っていると思うが、物語の途中(しかも悲しい場面)で終わっている。続きは、グァダニーノ監督曰く作る意欲はあるそうで、『ビフォア・サンライズ』シリーズのようにしたいそう。公開は2020年を考えている。その話がインタビューで出た時には、すぐにアーミーが「I am in」と答え、それを見て、ティモシーも手を挙げた。原作には(私を含め)読者の多くはエリオとオリバーのハッピーエンドと読めるようなエンディングが描かれているが、監督は、「原作に忠実にするかはまだ決めておらず、エリオはゲイでなくて、今作に登場するガールフレンドと関係を続けているように描くかもしれない」と示唆している。【このレビューの後間もなく公式で続編制作、2020年公開が決定:作品内容は原作に詳しく描かれていない3年後の物語で、エリオは自身をゲイとの認識には至っておらず自己を模索中。恐らく15年後〜20年後の物語(原作)の前編となる可能性有り】個人的には、ここまで今作(映画)が繊細巧みに原作に沿ってきたんだから、ぜひとも最後まで原作を大切にして欲しいと思う。ゲイが描かれた評価の高い映画作品はいくつかあるが、そのほとんどが悲しい内容である。どうか一つここで、映画としての格調と芸術性を備えた、ハッピーエンドな男性同士の同性愛映画を完成させて欲しい。
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