Kota

君の名前で僕を呼んでのKotaのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
5.0
“君が知るべきだから。君に知って欲しいから。“

映画と恋に落ちるとはまさにこの事なんだろうな。イタリアの避暑地で過ごす17歳のエリオ(ティモシーシャラメ)と彼の父が招いた大学院生のオリバー(アーミーハマー)の一夏の物語。昨年度“ムーンライト”がLGBT映画でアカデミー作品賞を獲得したことは記憶に新しいが、もしノミネートされたこの映画が選ばれていれば2年連続でLGBT映画の受賞となっていた。人との違いや偏見に悩み葛藤し、それでも尚愛するというこのテーマは、映画という美しい1つの芸術作品を作る上でこの上なくマッチしているという事は最早疑いようがない。

とにかく終始美しい映画。何がこんなに美しいのか、個人的に美しいと思った要素を5つ挙げてみる。まず1つ目が言うまでもなく主演のティモシーシャラメ。絵に描いたような美少年で、上裸のシーンが多く本当に彫刻のよう。女の子より肌が白く細い彼だからこそ。そしてルックスもさながらエンドロールを見れば彼がベテランに混ざって主演男優賞にノミネートされている演技力にも納得がいく。2つ目が舞台となる1980年代北イタリア。まるで夢の中にいるような世界の眩しい太陽と自然、歴史的な建物はこの物語の文字通りバックグラウンドにピッタリ。1980年代というスマホやゲームがない時代設定も重要で、本を読んだりピアノを弾いたり、川で泳いだりして時間を過ごすアナログな世界自身が美しいのかもしれない。3つ目はピアノの流れるような静かながら心を揺さぶる旋律とsufjan stevens の「mystery of love」と「visions of Gideon 」。こんなにも優しく埋もれてしまいそうな音楽が確かに映画に色を注いでいる。曲を聞くだけで鳥肌が立つ。

4つ目は構図。特に最上部に記したセリフの長回しシーン。敢えて引きで撮り、真ん中の像にセパレートされたエリオ側に焦点を当てる事で彼の緊張と困惑が見事に表されている。そしてティルトショット(カメラを縦方向に動かす)で一旦フレームをズラして二人の再開に合わせて戻すシーンは至極のショットだった(バスも完璧なタイミングで後ろを横切る)。ちなみにこのシーンで流れるピアノの曲は、その前にエリオが何かを抑えるようにゆっくりと弾いていた曲。それがこのシーンでは通常のスピードで流れ、エリオの気持ちに抑えが効かなくなっているのを表現してるのだと感じた。一つ一つのショットで小物や音楽に至るまで本当に考え込まれていて見惚れてしまう。そして最後の5つ目は思いやり。エリオの純愛はもちろんだが、捨てられても「一生友達だよ」と言える彼女や、息子がゲイであろうがいつも味方でいる両親(特に最後の父親のセリフ)など、エリオの周りには温かく美しい思いやりで溢れていた。息子が悩んでいる時にあんな言葉をかけられる父親はどれだけいるのだろうか…。

つまり、最早LGBTがテーマとかそんな事関係ないほどこの映画は美しい。目の保養とか通り越して神々しさすら感じる。切なくも心が澄み渡り、余韻が凄い。エンドロールでティミーの3分半の長回しからの“call me by your name”と出るタイミングが完璧すぎて頭から離れない。マイベストムービー更新、そして自分の中での2018年アカデミー作品賞と主演男優賞。一生大切にしたい映画。