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君の名前で僕を呼んでのminoriのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.6
イメージビデオとしては、もう百点満点。
北イタリアの自然や建築物は、どのシーンを切り取っても画になる美しさだった。

ただ、映画的には起承転結が物足りなかったかなぁ…
ひたすらに真っ直ぐで、純粋だった。
それが良い作用を生んでいるところもあれば、矛盾が生じている部分もあって、色々と考えてしまいました。
あと主人公2人の感情の遷移が少し分かりづらかった。
ビジュアルだけを楽しむのであれば、もう人も風景も音楽も、本当に美しかったと思います。

もしかしたら、『モーリス』や『アナザー・カントリー』のイタリア・フランス版という形容が近いのかもしれない。
この2作品は閉鎖的で、今作は開放的なので、そこに関しては真逆。
でも根底にあるものは共通する部分があるんじゃないかな。
ラストの感じとか、特に。

あと、原作通りなのか監督の性癖なのかは分かりませんが、とにかく尻と足へのこだわりが凄かった…。
ある場面でのメタファーとか、「よくまあやりおったなぁ…」と感じました。

良い意味でも悪い意味でも米映画的ではないので、昨今の映画界に一石を投じる作品になっていたと思います。

なにより、作品の中に原作者や監督が思い描いた「理想の優しい世界」が広がっていた気がする。

主演2人の甘く切ない恋物語は勿論美しいけれど、特に終盤での主人公少年の父親が秀逸だった。
台詞の中に愛と優しさとほろ苦さが充ち満ちていて、とても良かったです。


個人的に若すぎる俳優さんにそこまで興味がないので、あんまり響かなかった部分はあれど、ハマる人は凄くハマる作品だと思います。

追記:酷かったのが試写会後のトークショー。
映画評論家だかなんだかの2人がダラダラと喋っていましたが、LGBTQへの偏見がそこかしこに滲み出る話しかせず、あまりにも聞くに耐えなくて途中退出。
「『ブロークバック・マウンテン』を見た時、僕そういう描写(同性同士の性描写)に嫌悪感しかなくて…」的な事を半笑いで喋ってて、正直、目と耳を疑った。
よりによってLGBTQ映画作品の試写会後のイベントで、おま、そんな事言う???ってなりました。
個人の好き嫌いがあるのは分かります。
しかし、仮にも有識者として招かれているトークの場、しかもLGBTQ当事者がいるであろう会場内で、よくもまあ堂々と「自分は偏見を持ってます!」アピールが出来たもんだなと、呆れて物も言えませんでした。
作品が良かっただけに、オマケがガッカリ。やはり日本はまだまだジェンダー的・文化的後進国なのだなと思い知らされました。
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