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君の名前で僕を呼んでのcinemasticのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
5.0
これまでの人生で、自分の中で殺してきた気持ちの数々を思い起こす。それは恋愛のことだけでなく、友情でも仕事でもあらゆる場面で。それは生き延びるために僕が殺すという手段をとっただけで、もちろんそこに悔いはないけれど。そして「大人」になるにつれて、どんどん感情のコントロールもうまくなってきた。
でも本当は、自分の中に芽生える気持ちや感情に正解も間違いもないことを知らずにいた。どんな感情も同じくらい愛おしいものであるのに、年を取るにつれ感じることを恐れて、感じないように生きる。きっとこれは誰もが経る道であるし、実際生活する上でラクに生きるコツではあるんだけど、これまでの嬉しい体験も辛い体験も全てここで祝福して、また受け入れてあげたくなった。
あの時代の、自然と歴史に囲まれたイタリアの小さな町の、長い夏休み。やることも限られているような何もないところだけど、それで十分な暮らし。そんなヨーロピアンな雰囲気から「侵略者」アメリカが混じり入っていく感じが可笑しかったり。夏の太陽にずっと当たっているかのように、暖かくゆるやかで静かに話は進む。音楽も透きとおった美しさで、この映画の調和した感じは奇跡みたい!
ティモシーシャラメは、刃物みたいな鋭さもあれば崩れそうな脆さも持っていて、少年だったりエロチックだったり、すごくひき込まれる俳優だった。劇中の台詞も美しいものが多くて、口にしてみたくなるようなものばかり。というか、主人公の周りの人達が愛ある人ばかりで、こんな大人がいたらなぁと思った(今もそういう人間に囲まれていたいし、自分がそういう人間でありたい)。
自分の中に葬っていた記憶と感情が湧き出てきて、そんな過去と現在の自分をそっとハグしたくなる余韻。映画の余韻が、自分に浸透していく。最高!