Taketo

君の名前で僕を呼んでのTaketoのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
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乱暴な言い方になるが、LGBTをテーマにした映画は飽きている。観客の知らない世界への窓口としてよく扱われるテーマのひとつだ。映画制作会社も収益や賞が見込まれるからこそ制作しているというところもあると思うし、またマイノリティを扱った作品を批判はしづらいというのもあると思う。
しかし、LGBTをテーマにした作品という事に物珍しさや変な特別視しがなくなった時、初めて世の中から差別がなくなったと言えるように思う。だからこそあえて飽きていると言いたい。
「この映画は驚くほど『自分がゲイである』という葛藤がない」というコメントがありその通りだと思った。確かに周りの目を気にして直ぐには関係が近づかないが、迫害にあうわけでもなく登場人物を否定する存在は出てこない。男が男を好きになるのは当たり前であり、この物語は今までのものより先に行っているのかもしれないと思った。つまりそこまでの問題は他の映画が今までに語ってくれたから今さら描きませんということだろうか。
そう考えた時この映画は男と男の普通の恋愛映画であり、月並みな言い方になるが男女関係なく、こんな一夏の恋をしてみたいと思える内容だったかなと思う。
最終的にアーヴィンの結婚相手が異性であるということに切なさを感じた。結婚した後も思い出すのはあの時の夏なのだろうかと思うとやはり悲しい。
とはいえ一番心に響いたのはラストの父と子の会話だ。本当に良いシーンだったと思う。序盤に多くの不幸を見ない分振り幅があり、エリオの幸せの土台を見る事が出来た。

アーヴィンがりんごを食べようとする危うさが2人の関係の危うさを想起させるようで好きでした。
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