てっぺい

君の名前で僕を呼んでのてっぺいのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.0
【エンドロールで泣ける映画】
同性愛の感情が内にある事を知った青年の、相手の男性も含めた心の動きや、家族の想い、全ての感情がまさかのエンドロールに詰まっている。

アカデミー賞脚色賞受賞、作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート作品。出演は、本作でアカデミー主演男優賞にノミネートのティモシー・シャラメ、『コードネーム U.N.C.L.E.』のアーミー・ハマー。脚本は『日の名残り』のジェームズ・アイヴォリー。監督は『ミラノ、愛に生きる』のルカ・グァダニーノ。

夏の避暑地で、17歳のエリオは、24歳の大学院生オリヴァーと出会う。彼は夏の間をエリオたち家族と暮らす事に。ふたりはいつしか近づいていき、やがて激しく恋に落ちる。しかし夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づく……。

全ての感情がまさかのエンドロールに詰まっていて泣けた映画。脚色賞を受賞したのはこのエンドの作り方がポイントだったと思う。自分はどうしても男から男への愛情という気持ちは理解できないのだけど、この映画を見て、少なくとも“感じたことを殺さず大切にする”事の素晴らしさ、美しさを感じた気がする。
この映画が伝えるメッセージはとても尊い。LGBTはこの映画の設定の時代でも、いつの時代でも少数なわけで、それを認めず虐げる人間はいつだって少なからずいるはず。17歳にしてその少数派の感情が内にある事を知った時、自分がどう向き合うべきなのか、そして周りがどう接するべきなのか、1つの答えを示してくれていると思う。
◆少しネタバレ◆
2人がとても楽しげに旅行を楽しむ姿がとても印象的だった。ほぼアドリブなんじゃないかというくらい、ナチュラルな笑顔、笑い声、じゃれ合う姿、彼らが役者として本気で臨んだ感じが伝わってくるし、なんだか2人が同性である事を忘れてしまうような、美しくて楽しくなるシーンだった。熱演に拍手。
映画全体としても、さすが避暑地が舞台の映画、美しい田園風景や、鳥のさえずり、広がる湖面や水の音、見ているこちらの感情が自然と穏やかになるようなシーンがふんだん。そこだけまとめてDVDにしてほしいくらいだった笑
◆大事な部分のネタバレ◆
まあとにかく、お父さんがエリオに語りかけるラストのシーンがあるのとないのとでこの映画は大違い。同性愛の悩みや気持ちの揺らぎはそれまで充分伝わってきていたけど、これで終わる映画なのかなと思いきや、圧倒的に映画のメッセージの深さが広がったシーンだった。“感情を潰そうとする親はいるかもしれない、でも私は違う。エリオ、感じた事を葬ってはいけない。”(みたいな台詞だったと思うけど)とてもあたたかい、重みのある言葉だと思う。助演男優賞をあげたい!役どころもセリフも見た目もそうなのだけど、お父さんが『グッド・ウィル・ハンティング』のロビン・ウィリアムズに見えて仕方がなかった笑
舌を巻いたのは、前述のエンドロールしかり、脚本と原作の作り方のうまさ。オリヴァーは、大切な事以外は全て“後で”。でもエリオを誘い出す時は、エリオが“今すぐじゃなきゃダメ?”と戸惑うほど迅速。オリヴァー目線での心情の絶妙な対比を作れていたと思う。また、中盤エリオがベッドで戯れた果物はアプリコット。オリヴァーが映画冒頭で熱弁した果物で、庭園で2人で収穫もしたアプリコットが、エリオにとってオリヴァーのイメージを重ねる果物に当然なるわけで、このアイコンの作り方、本の書き方は絶妙。
贅沢を言うと、エリオがオリヴァーに感情を持ち始める理由というか、心の動きというか、全く同性愛の感覚が分からない自分にとっては、もう少し丁寧な描写が欲しかった。イタリア人には普通に理解できてしまうのだろうか。。
はじめは感情移入できるかとても不安だったけど、見て心底良かったと思えるステキな映画でした!
てっぺい

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