カツマ

君の名前で僕を呼んでのカツマのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.3
この映画が繊細なだけのラブストーリーだったらこんなにも涙が頬を伝うことなんてきっと無かった。絵画の中から抜け出してきたような色彩。彫刻のような造形の2人。儚いひと夏の夢のような物語なのに、この映画の命題は現実的なものだった。止められない恋の仕草、臆病になる気持ち。幻想的な風景の中に、目の前で恋愛する2人の息遣いが確かに聞こえた。
スフィアン・スティーブンスの歌声は2人を繋ぐ水面のように透き通り、今にも消え入りそうなほど美しかった。

1983年、エリオは両親と共に毎年北イタリアの別荘でひと夏を過ごしていた。ある日、考古学者の父親が招いたオリヴァーという教え子がここで夏の6週間を過ごすためにやってきた。オリヴァーは24歳。背が高くダンスも上手い彼に、エリオの女友達はすぐに恋に落ちた。
エリオはそんなオリヴァーにさり気なく嫌悪感を示すも、心の片隅に疼くものを感じていた。それは恋なのか判然としないまま、エリオはオリヴァーへの想いを募らせ始めていく。

この映画は130分を越えており、シンプルなわりに長尺だが、無駄なシーンは全くと言っていいほどなかった。無駄なセリフも無く、個々のセリフのすき間にこそ情緒を感じさせてくれる。だからこそ、ある人物の想いの詰まったセリフがあまりにも響いてしまい、涙が止められなくなってしまっていた。

ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、2人の完璧なるフォルム。それは美しい風景にピタリとハマる造形美のような世界。『君の名前で僕を呼んで』。お互いの中に入っていく究極の愛の言葉のようにそれは響いた。
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