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君の名前で僕を呼んでのNYoLoのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
5.0
ゴールデンウィーク後半の初日、シアターは9割がた女性で、ほぼ満席。注目度の高さが伺える本作。
インフィニティ ウォーに続き、この連休には絶対見ようと決めていた。



北イタリアの(多分)乾いた空気の中、エリオを見守っているような、エリオになったかのような、そんな心の揺さぶられ方をした時間でした。


出会って
気になって
近づいて
もっと近づきたくなって
期待して
裏切られた気がして
離れて欲しくなくて

そんな恋の始まり。


こんなに好きだということが
嬉しくて辛くて
幸せを手にした瞬間
終わることがゾッとするほど怖くなる

そんな恋の絶頂期。


分かっていても離れなきゃいけなくて
たくさんのナイフで切り刻まれるみたいに心が痛くて
でも容赦なく日常は続く

そんな終わり。



恋って、そうそうこんな風だった。
その痛みまで思い出した。
映画でそれを人に感じさせることができるなんて。役者の力量もさながら、音楽の選択、カットの割り方、編集の仕方で自然とそんな感情になるように作ってあるんでしょう。専門的なことは全く分からないけど。

本当に本当に素晴らしい作品でした。本当に本当にティモシー・シャラメ、すごかった!

見てよかった。胸に迫るエンドロールに、シアターを出ても暫く、行ったこともないイタリアの空気と、エリオの痛みが体にまとわりついているようだった。帰りの電車で、今ごろ泣きそうになっている。









‥‥数日後。
ここまでの余韻を残す映画に出会うことはそうそうないので、こんな風に何度も思い返すことも少ないのだけど、それ故に時間が経つにつれ、あれにはどんな意味があったんだろうと気になって(特にハエが。夏のハエはわかるんですが、暖炉前にもいたので、絶対何かあるんだろなぁと)、いろんな方のレビューや解説を読んでいました。

ユダヤ教のペンダントは、単にお揃いにしたかったからかなぁ、程度の軽さで捉えていたけど(そんな側面もあるはずだけど)やはり多分に宗教が絡んだもう一つのストーリーがあるみたいです。

それがなくてもこんなに完成されているのに、隠された要素まであるとは!感服!!











そして約10日後、原作を読み終わったところ。
映画は、この小説のラスト以外の、印象的で心が揺れ動く部分を、1つの素晴らしいストーリーとしてうまくまとめ上げていたんだなぁとまた感嘆。謎解き要素は脚本で加えられたことも確認。脚色賞、納得です。

原作では、映画のパートはすべて過去で、ずっと、17歳のエリオがオリヴァーに惹かれて止まない、自分をコントロールできない、その様子を緻密に描いています。殆どエリオの主観、心の動きの描写なので、これを映像で表そうとした(そして成功している!)ことに更に驚嘆です。

ラストに向かって、むしろ映画で描かれた以降に
Call me by your name
この言葉の深さが迫ってきて、何の涙かわからないけど、とにかく涙が止まらなくなってしまった。

オリヴァーがエリオでエリオがオリヴァー。その瞬間はあの夏なんだけど、それが形を成すのはもっと後になってから。それがすごく胸を締め付けた。

こんな気持ちになる相手とは、私は一生会えないんだと思う。










そして1ヶ月後。どうにかレイトショーでもう一度、この時間を過ごすことができた。

小説を2回読んだ後なので、映像からと記憶からと、エリオの気持ちを思いながら、前回は目が届かなかったところまで、そして水の音や鳥の声などにも耳をそばだてて、心に焼き付けてきた。

原作で、オリヴァーの心情はエリオの想像でしか描かれないので、その表情から、エリオへの気持ちを一生懸命汲み取った時間でもあった。

原作と重ねて見てしまうと、映像からダイレクトに伝わる制作側の思いが少し薄まってしまうかもしれない。もっと繰り返し映画を見てから原作を読めば良かったかな。

でもそれくらい、映画も原作も、同じ重さで素晴らしいから、多分この先も、何度も見るだろうし読むんだと思う。

珠玉とはこういうことを言うんだ。








そして更に約半年後。
予約購入したDVDを観て、吹き替えでも観て、コメンタリーでも観終えたところ。

今でも、びっくりするくらい気持ちが持っていかれてしまう。暫く、心がここにはいなくなる。北イタリアで漂ってしまう。エリオの気持ちと同調してしまう。悲しくて苦しくて。

コメンタリーでマイケル・スタールバーグとともに訥々と語るティモシーの声もとても好き。撮影の裏側を知って、なおこの世界が好きになりました。





更に約2年後。

新型コロナウイルス感染症で完全に生活が変わってしまったけれど、梅雨が終われば夏が来る。

夏の始まりを娘と本作の鑑賞で迎えてみました。

いつ観ても、何度観ても、1人で観ても、2人でも。やっぱり好きです。





そしてそれから、また2ヶ月後。
続編である『FIND ME』を読んでいる。

それぞれが思う「本当の人生」。
人生はまだ始まっていなかった。
あのときで止まっていた。
君を見つけるまでは。
まるで片割れを探すように、本当の自分を探すストーリー。
人生って時間の経過ではなく、何を人生と思うかなんだ、という哲学的かつ過度にロマンチックな内容です。

個人的に、今だからこそ響く言葉が沢山あって、1ヶ月前でもなく1ヶ月後でもなく、今、この本を読もうと思って、実際にワイン片手に読んでいる、その事実に酔いそうになる。

それくらい、人生って複雑。
なにが正か分からない。
いつまでも満たされない。
瞬間瞬間で変化する。
いつもなにかを求めている。
さっきまでなんでもなかったことが意味を持ったりする。
抵抗しようにも無駄な足掻きだったりする。

そんな、言葉にできない心の動きを、言葉にするのがうまい、アンドレ・アシマン!

あれは終わりではなかった。確認しなくてもわかっていた。ただ、探せばよいのだと。その時を、2人はずっとわかっていたんだと。なんて最高のハッピーエンド。

あの場所で。2人で。これからも。

続編撮るって???
絶対観に行くに決まってる❗️
NYoLo

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