みかぽん

君の名前で僕を呼んでのみかぽんのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.0
1983年、北イタリアの田舎。夏の日差し。
退屈な毎日に風穴を開けた、美しくて逞しく、理知に富んだ束の間の訪問者。

劇中では「愛している」とか「好き」なんて言う直接的な言語表現はおそらく一度も発せられてなく、(君の声が好き、という限定的ながら会話はあったけど)先手に出たシャラメ君の告白らしき言葉も、「好き」を抑圧していた二人の心の中だけで繋がり合ってスパークし始めるような。そんな世界観にゾクゾク💦
何気ない言葉や目線、反応で好きな人の心の内を読み取ろうとしていた、何というか、感受性豊かだった在りし日の自分(もはや涙😭)を再発掘するような映画だったわ。

一生忘れることのない、ひと夏の恋。
辛かったことさえも、全て覚えておきなさい。大人なると感性は衰え、外見に至っては誰も見向きもしなくなってしまうのだから。
およそ世間の父ちゃんでは発想もしないような(?)シャラメ父ちゃんの息子への言葉が胸に沁みる。
見向きされなく、も去ることながら、そうよ💦 自分の想いを歌に重ねて泣いた私なんてとっくにこの世にいないもんなぁ。あぁ、衰えていたことにすら全く気付かぬ位、私の感受性は地中深く埋もれてしまったのか…。
そしてラストのシャラメ君の長回しは、誰しもが持つ、いつかの切ない自分が蘇えるのではないかしら。

それにしても、お互いが自分の声で自分の名前を囁き合ううちにそれらが重なり、溶け合う様は実に官能的でこれまたウットリ。(これは2人にとっての「愛してる」の隠語だったのだろう)
あぁ死ぬ前までにこんな経験をしたい!(もはや叶わぬ野望)。
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