KenzOasis

君の名前で僕を呼んでのKenzOasisのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.5
Call me by your name, and I call you by mine.

北イタリアの避暑地で過ごすエリオとその家族のもとに、大学院生のオリヴァーが訪れた。眩しい一夏を穏やかに過ごすうち、ふたりは静かに惹かれ合い、忘れられない恋をする。

映画は総合芸術。それをほんとうに見事に表現した作品でした。

若さの中にある"戸惑い"を、エリオとオリヴァーを中心にして、マルシアやキアラを含めた若者たちを通じて美しく描いている。
観ているぼくたちは、その若者たち、あるいはエリオの両親の中に自分を見出して、まるで同じ一夏を過ごすような感覚になります。

北イタリアの圧倒的に美しい景観、音楽と余白の使い方の上手さが見事すぎました。
しかし中でも、なによりもぼくは、これ以上ないほどに巧みで優しい言葉選びに感動しました。

君の名前で僕を呼んで。僕は僕の名で君を呼ぶから。
大好きな人を自分の名前で呼ぶってなんだよって思いそうなもんですが、それは単なる淡い恋の思い出じゃなく
自分のことを肯定して、好きになるということでもあるのかなあ、なんて思ったんです。

そしてお父さんの伝える言葉なんて本当に最高じゃないですか!!なんて的確で、優しくて、勇気の湧く言葉なんだと。
その言葉を正確には覚えられていないのに、ずっと感動してます。
『教養』ってこういうことかな、と感じ入るものがありました。
何一つ忘れたくないセリフがまたひとつできました。

それは原作者のアンドレ・アシマンの哲学であり、そしてそれを引き継いだ上で脚色した脚本のジェームズ・アイヴォリーの哲学でもあるわけですが、素晴らしすぎました…
かくありたいものです。

主演のふたりの演技は言わずもがな。加えて、エリオの両親の存在こそが、この作品を至高のものにしていると感じます。

待ちに待った一本、それだけの価値が十二分にある映画でした。
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