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君の名前で僕を呼んでのkassyのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.0
北イタリアのひと夏の恋。
大学教授の息子エリオは、夏の間訪れる別荘に招かれた博士課程の大学生オリヴァーと出会う。最初はいけ好かないやつだと思っていたが…。

とにかく主役のエリオを演じたティモシー・シャラメのピュアな色気が素晴らしい…!眩しい!複雑な心模様を演じながら、ラストの長回しでは静かに感情を表します。彼の魅力なしには成立しません。久々に現れた成長を見守りたい逸材です。
そして彼を翻弄するアーミー・ハマーも良い。ダイナミックな魅力に溢れてます。

正直前半は結構微妙な距離感で駆け引きを2人がしているため、景色は綺麗だけどセリフが曖昧でかったるさを感じていました。しかし、後半は2人が感情を露わにしてやり取りが直接的になるため面白くなり。
そしてトドメはラストのお父さんの言葉。
本っ当にその言葉が素晴らしかった。その言葉により映画の景色が、頭を駆け巡って全てがキラキラと愛おしく思えてしまえるような素敵な言葉で。

大人は、自分を守るために感情をだんだん殺して生きていく。
だけど、10代の彼には、その感情を大切にしてまっすぐ受け止めてほしい。そんな親の愛が詰まった言葉だったのです。
なんて、美しい言葉。
なんて、聡明なご両親。
大人になってしまった私にはグサグサと刺さりまくりました。
彼が体験した瑞々しいあの感情は、既に私は手放してしまったもの。
その一瞬を切り取った映画はだからこそ美しく、そしてきちんと周りの優しい目があるからこそ、この作品の素晴らしいメッセージ性が完成されているのだと思うのです。

実は、この映画を見た時に
おそらくゲイのカップルが近くで見ており、下ネタには大いに笑い(特に果物のアレ)、そして最後の父の言葉に大いに泣いていたんですね。そのリアクションがとても素直で私は尊いものに思えて。もしかして彼らの父は、こんなに理解のある人じゃなかったのかもしれないなぁ…なんて思いながら、あぁ映画館で観て良かったなと心底思ったのです。自分一人ではきっと感じることが出来なかった価値観を、言葉じゃなくてその場の空気で教えてもらった気がして。
すごく良い映画体験でした。
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