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君の名前で僕を呼んでのtouchのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.2
"Later..."
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なんと美しい恋物語だろう。
BL界隈が沸いているからといって、本作を"同性愛を描いた色物映画"と捉えて敬遠するのは実にもったいない。
古代ギリシャ的な思想に基づいて、愛と人生の哲学をじっくりと見つめる。
"二度と戻らない季節"に思い浸らせてくれる傑作。
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少年エリオのひと夏の恋は、
「好きになったひとがたまたま素敵な男性だった」というだけで、
禁じられた悦楽というよりもむしろ必然、思春期の純粋なる恋慕だ。
これは誰もが共感できる、初めての恋の物語である。
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母性(父性)をくすぐる少年性、繊細さを帯びた少年:エリオ役にはティモシー・シャラメ。見事にハマっている。
対するオリヴァー:アーミー・ハマーは、ギリシャ彫刻のような立派な肉体と憂いを秘めた青い瞳で、強烈なマッチョイズムを感じさせる。
風景の美しさも相まって、この二人の並びがとても画になる。
切り取る場面のすべてがまばゆく、思わずため息が漏れる。
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物語が大きく動く作中の後半、エリオは
オリヴァーのメモが挟まった一冊の本を手に取る。
それはヘラクレイトスの著作の『断片』であった。
ヘラクレイトスは「万物は流転する(パンタ・レイ)」という概念を提唱した人物とされており、
その考え方を象徴する言葉として、広く知られている言葉が
“誰も同じ川に二度入ることはできない”
である。
そう、流れる川の水も過ぎ去る時間も
誰にも止める事はできない。
あの夏は一度きり、二度と同じ夏がやってくることはないのだ。
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ヘラクレイトスは万物流転説を通して"自然界は常に変化している"と考えた一方で、変化しない不変の真理(ロゴス)を"火"に見出したという。
在りし日の思い出にふけりながら、揺らめく暖炉の炎を見つめる彼
季節が変わっても、心に残り続ける想い
変わらぬ愛を象徴する、切なくも美しいラストシーンなのでした。