もう「ゲイ」だとか「LGBT」という括り方にはうんざりで、「BL映画」という呼称にもうんざりだ。この映画は間違いなく「エリオ」と「オリヴァー」という2人の関係を追った映画以外の何物でもない。オープニングから、古代彫刻の写真を通して、私たちは時を遡り、「人と人との純粋な関係性が生まれ出ずる時間」へと連れて行かれる。「恋愛映画」という呼ばれ方にさえ、違和感がある。「2人の関係」を何故、名付けようとするのか。「特別な関係」、エリオのお父さんの、息子に語りかけた言葉が私の世間への不愉快をゆっくりと溶かしていく。
「自分の世界」を持ち、「自分を大切にしたい」2人にとって、それがたとえどんな形であったとしても、互いを受け入れたということは、かけがえのないことである。それを言葉でなく、表情や仕草、小物で表現しているのが気持ちいい。