大越

君の名前で僕を呼んでの大越のレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.5
無垢で素直な映画です。
無垢に素直に、様々な記号を全て性的な発達段階に強引に還元する、そのシンプルさゆえの強さがこの映画にはある。
(タイトルから期待される所有格の転換の効果は全然冴えないし、物語は平坦で退屈だが)無垢に素直に感動がしやすい。
実際、劇場内で複数の女性が結構なボリュームで号泣していた。その彼女たちの"善良さ"に辟易してしまった。無垢で素直な感動ほど怖いものはない。

おそらくこの監督は啓蒙主義者です。
"sophisticated"な姿を素直に理想として全肯定するのも、国家や宗教に抑圧される同類として共産党を引っ張ってくるのも、全部それに起因。

その啓蒙に安易に乗っかってたまるか!
結局、ヘテロである私が、無垢に素直に、同性愛をプラトニカルな一種の理想の恋愛像として、安易に消費してしまったら、それこそ抑圧の構造の一端を担ってしまうではないか!
ファッショファッショ!

多分この映画が好きとかいうヘテロは、電車の中で本を読んでいる異性がタイプ、とか言っときながら自分は車中でインスタのストーリーをチェックしてるだけのつまらない人間。

というわけでこの映画に対してはアンチなのですが、エンディングの長回しがあまりにも良すぎたので高評価です。
大越

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