カルダモン

君の名前で僕を呼んでのカルダモンのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.2
どうにも食指が動かずスルーしてたのだが、グァダニーノ監督『サスペリア』を楽しみに待つ身として避けては通れず。結果観てよかった。

オープニングから伝わる画面と音楽の美しさにアッサリと誘われて、133分という尺も気にならずスルスルと運ばれた。
ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーのコンビはもとより、北イタリアの風景と陽光がサラサラと心地よく、こんな土地で過ごしていたら、どんな気持ちが湧き上がっても別に不思議ではないかもなぁとボンヤリ思う。

大きな波乱がない分、繊細な描写が際立つ。アカデミー賞授賞式で白のタキシードに身を包んでいたシャラメが、短パンTシャツで絡まり合う。
巨体のアーミー・ハマーを誘い受ける華奢なシャラメ。シャラメに気付いて欲しいが意外と踏み込めないアーミー・ハマー。

お互いに自分の名前で相手を呼ぶシーンの静けさと、相手の心を抱く声の感触にゾクっとする。逆さまに映される二人の顔も、二人だけの空間のようでどこか不思議な時間体験。

夏から一転、冬の場面の美しさが際立つラスト。暖炉を見つめるシャラメの肩に止まる蝿、食卓の支度をする家族の声がなんだかたまらなく愛おしくなった。