ロッツォ國友

くるみ割り人形と秘密の王国のロッツォ國友のレビュー・感想・評価

3.3
「寂しい方が忘れないわ
思い出が宝物になるもの」


ディズニー様お得意の、手慰み程度に古い名作をテキトーに掘り返して大金ぶっ叩いて作る高品質量産品です!!!
置きにいった感はあるが、それでちゃんと置けているのはやはりディズニーの力あってこそ。



バレエの定番として有名なだけあり音楽は言わずもがな素晴らしいが、キャラ造形キャラ描写やビジュアル面でも作り込みに相当力が入っており、また適切なCG使いとそれが悪目立ちしないような実写使いのおかげで古い定番物語を壊さぬままファンタジックな世界観をバッチリ演出し切っている。
ホント言うことないっすね。見かけで違和感やショボさを感じなかったっす。
さすがっす。

ここまで綺麗に作り込めるようになる為に、物凄くたくさんのお金と時間と労力が掛かっているはずだが、それをポンポン量産しちゃうあたりがディズニーの強みであり、同時にどこか心のこもった感じを失わせている要因にもなっている気がする。
気のせいかな。



まず第一に、主人公クララの、特に序盤での物分かりが良すぎて、むしろ観客が置いてけぼりになりそうなのがやや気になった。
フシギな世界観に迷い込んでヤバい事しか起きてないのに、クララは割とスンナリ受け入れて話をポンポン前に進めてしまっている。
え?リアクションそれだけ??みたいなシーンがいくつかあった。ファンタジー系のお話を見慣れてれば分かるけれど、やはり何も知らない主人公には一応驚いて欲しかったりする。個人的には。


ただこれ難しいところで、この内容のお話は例えばちゃんと文章で表現した場合小学校高学年レベルがカンタンに読める文庫本1〜2冊分くらいになると思うが、それを映画でじっくりやると3時間超えの映画二本分とかになる気がするし、しかしお話そのものは作家が友人の子ども達の為に即興で作った物語が元なわけで、じっくり時間をかけて引き延ばしたからといって面白くなるとも思えず、こういうまとめ方が一番無難なのかもしれない。
もやもやするなぁ。


しかし大変、本作最大の問題は、主人公役のマッケンジー・フォイがあまりにも可愛過ぎて真面目に突っ込む気が失せるということである(白目)。
お父さんの大人の事情には全く理解を示さないのにファンタジー世界だけは一瞬で飲み込むクララだが、とりあえず可愛いから良いや、それで良いです、というテンション。
可愛くない瞬間が一秒も無くて困る。
まともに批評できない。助けて。

あと上述したようにディズニーが札束戦車で大人の事情を何でもかんでも蹴散らしている為か、登場する衣装が何もかもピッタリでバッチリ似合っており、画面的な見栄えの良さを一切損なわないパワーがあるのだ。


小道具はどこまで行っても所詮小道具、映画の主役にはならない。
だが、何がイチバン映画の"世界観"を形作るかと言えばそれは間違いなく小道具であろう。
その物の使用感、新しさ古さ、色合い、大きさ重さ硬さ等々によって画面の雰囲気が形作られ、ストーリーに厚みを持たすことができる。
ワタクシはいつもディズニーが金持ちであることをイチイチ揶揄しているけれど(すんません)、金の使い道を分かっているからこそ、ディズニー映画は例えお話が破綻してようと雰囲気の面で他に見劣りすることは絶対になく、それなりの話になってる程度でも十分見応えあるものになるのだろう。
カンタンには真似できない要素ではあるが、学ぶべきあり方ではないだろうか。
素直に讃えるべきだと思う。


あとマッケンジー可愛い可愛いと絶賛したが、その衣装のまま割と激しめのアクションもやっており、状況に流されるだけのか弱い少女で終わらせないところは割りかし現代的な再解釈再構築になってるのかしら?

近年Political Correctness絡みであちこち爆発炎上騒ぎの絶えない創作界隈だが、ディズニーはその辺、誰も文句言わないようなディテール構築にとにかく全力で取り組んでおり、本作の演出でもぬかりない。
なんかね。。もうちょっと乱暴でも良いと思うんだけどね。。



まぁそんなこんなで、映画としてのまとめ方が非常に技巧的で、お話自体もキチンと綺麗に納めていて最後までさすがディズニー兄貴!って感じ。
構図的には「千と千尋の神隠し」的な話運びなのだけど、ただ単に冒険させるだけじゃなく、"主体性と行動力と知力を使って状況を切り開く勇気を持て!"的なメッセージをちゃんと織り込んでおりスキがない。
大人に、"子どもに観せても良いな!"と思わせるだけの説得力があると思いますね。
着地でスッキリするしちゃんと満足できる。
さすがですよ。


まぁ、てきとうに調べた感じ、アメリカでもかなり人気を博している一方、制作費に1億2,000万ドルも使ってしまったので今のところゴリゴリの赤字だそうだ。
なんつーか、ボーナスが出たから銀座の寿司屋に行ってネタでアイスホッケーごっことかして遊んでたらお会計で破産する羽目になったみたいなお話で、我々庶民とは微塵も関係ない世界での出来事としか思えず特に何も感じないのだけど、だからまぁ、高い金掛けて綺麗に誰も傷つけないようなエンターテイメントに仕上げていてもビジネスとして成立するとは限らない、てなあたりが厳しいところですね。

冒頭で示した通り、良くも悪くもディズニーの高品質量産品なので、特別損はしないが一生残る作品かと言われるとよく分からない。
でも子どもの時に観たらこれは忘れられないだろうし、大人になって観直しても決してガッカリしないと思うし、こういうので良いんじゃないでしょうかね。


面白かったと思います。
とりあえずマッケンジー可愛い。ずるい。
ごっつぁんした。
ロッツォ國友

ロッツォ國友