大傑作。活劇として、ロード・ムービーとして、バディ・ムービーとして、あらゆる面で高次に楽しめる。そして何より会話劇としての面白さ。
「deal:取引」の映画。冒頭のヘイリー・スタインフェルドによる価格交渉のやり取りから嬉しくなってくる切れ味。全てのダイアログに論理性とリアリズムが反映されている。そこにジェフ・ブリッジズの昔語りの無駄話が差し挟まれる匙加減。脚本の良し悪しで映画を評価することはほぼ無くなっている自分ではあるが、プロット展開の面でもダイアログ設計の面でも、このコーエン兄弟による脚本にはうならされる。
ロケ撮影も素晴らしい。鉄道から降車したスタインフェルドの眼前に広がる西部の町の光景。ライフルで狙うパノラミックな俯瞰ショット。
キャラクタ造型も皆秀逸。特にヒロイン少女役のスタインフェルド。芯の強さと聡明さが野卑な荒くれ者たちの中で輝きを放つ。米国版蒼井優といった感。
マット・デイモンの舌の件りだとか、ところどころでコーエン兄弟一流の趣味の悪さが見え隠れするのも嬉しい。