Jun55

ローガン・ラッキーのJun55のレビュー・感想・評価

ローガン・ラッキー(2017年製作の映画)
4.3
娯楽用映画としても十分楽しむことができたけれども、この舞台背景を「トランプ王国」と繋げてみると面白いし、それがアメリカでこの映画を面白くしているところではないかと思う。

舞台はウエストバージニアで、ここは石炭業界の衰退から全米でも最も貧しい州の一つである。このエリアは、ベストセラー「ヒルビリー・エレジー」でも脚光を浴びることになった”ヒルビリー”、経済的に恵まれない白人労働階級の人々が住むアパラチア地方の属するまさに「トランプ王国」。
”ヒルビリー”は熱狂的なトランプ支持者でもあり、その政治動向は社会現象化しているのだが、「ヒルビリー・エレジー」でも述べられている通り、”ヒルビリー”は経済的に厳しくなる状況を他人の所為にする(オバマ!)、生活環境を変えるために他の地域(州)に移ることを考えない(そこに守るべき伝統があると信じている)、過度に楽観的、と評されている。
この映画の面白いところは、そのような政治的な要素、斜陽産業、解雇、離婚(家族崩壊)、医療保険問題、帰還兵士問題等々をちょっとしたギャグや皮肉を込めながら意識的に散りばめていることだ。
”楽観的”という意味では、その苦難な環境を変えるために強盗を企てる、というストーリーなのだが、その発想自体、トランプを大統領にする、ことと重ねあわせると何とも社会風刺の効いた映画になるのではないだろうか。
(ただ、”ヒルビリー”の人情味溢れる部分も描かれており、必ずしも一方的に批判的に描かれている訳ではないので映画として楽しめるのだろう)

繰り返しになるが、そんな政治的側面を除いても映画としてとても質が高いと思った。
テンポ、ストーリーの組み立て方、ちりばめられたギャグ、豪華俳優者の演技等々。
唯一の難点は南部英語の聞き取りが極度に難しかったこと。。。
Jun55

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