八木

ローガン・ラッキーの八木のレビュー・感想・評価

ローガン・ラッキー(2017年製作の映画)
3.6
 見終わってスタッフクレジットに「スティーヴン・ソダーバーグ」が出た時に『だからか』といろいろと腑に落ちた。
 古くはオーシャンズ12、13を見た時に、展開や種明かしに全くついていけていない自分に対して「理解力が人よりやばいことになっているのでは」と疑心暗鬼になったのだが、その後いくつかソダ兄さんの映画を見て、わからなくてもいいやという開き直りを頂くという経験をしました。
 今回、例えばラストシーンを見た時に、きっと超楽しい思いをした人がいると思うんです。あんだけカメラの方向向けるのに溜めたわけですし、そりゃもう鳥肌ぶわーの素敵な場面がそこにあったはずなんです。でも、僕は「誰ですか」ってなったんですよ。ソダリテラシーのある人々からすると、気を配っておくべきポイントとかきっとあって、もしくは消化しておく事前課題があって、『そこともつながってたのかイヤーこりゃ参ったね(おでこピシャリ)』となっていたのだと思う。でも、僕はもうおじさんに足突っ込んでおり、恥じらいつつ堂々と言わせていただくと、よくわかんなかったんです。ラストも含めて、種明かしが始まる後半の後半については、途中から完全に理解が追い付かなくなっていました。
 これ別に、「実はソダ演出が足りてないんじゃね」と言いたいがための皮肉とかってわけでもなくて、その証拠に、楽しいところは楽しいんですよ。特にアダム・ドライバーがコメディやってるところとか、ダニエル・クレイグのありがたみとか、画面に映る俳優が魅力的になってたのがとても嬉しい。チーム犯罪モノっていうジャンルから保証されてる楽しさは確実にあったし、そこから「計画のための計画」という振りを効かせて、人生を取り戻す方向に進ませてたのも感動的だったような気がする(自信はない)。犯罪完了後の山場は、正直きれいに進んでるのか落ちてるのか今でも全然判断できてないけど、うまくごまかされてること自体が嬉しかったりもしました。でも、ソダーバーグ監督作品て大体、「うまく騙されたらきっと面白かろうな」という負け惜しみ感が常に大きく引っかかりになって、感想に困るのです。
 この作品単体でいえば、金の配分先とか、『あいつらに配分されてるところも見せてくれ』という妙な省略とかが気になった。あと、人生を取り戻すために犯罪完了後の山場の展開がああいったものだったとしたら、そもそも金を奪う目的を持つこと自体、メッセージ的な重み無くなるんじゃね、とかも思った。それもまた、レース主催側のごにょごにょできっちり言い訳はしてるんですが、これも僕の脳内では、きっちりとした言い訳なのかどうかがいまだによくわかってない。そこまで調べてたのか、結果論なのかもわからない。
 そういう、よくわからない理解しにくい部分全部について、ソダーバーグ演出によって、『とてもうまいこと落とせていて、理解できない人の敗北』に思えてしまうから、いまいちこの監督の作品は感想の歯切れが悪くなるのでした。何となく見に行って何となく消化するのが正しいような気もしています。
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